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【絶対王者復活】左回りのドイツGPで発揮された「ライバルに勝つことを諦めさせる」マルケスの強さの本質とは
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2021/06/23 17:02
ドイツGPで581日ぶりの勝利を遂げたマルケスは、ここまで苦労をともにしてきたパーソナルヘルパーと抱き合い、感傷的な表情を見せた
いやいや、オリベイラは十分に速かった。しかし、2秒のリードが1秒に縮まったとき、マルケスは再びペースを上げた。マルケスが超一流ライダーになれたのは、勝利への強い気持ちはもちろんだが、今回のような展開になったときに、戦う相手に「勝つこと諦めさせる」強さにあるのだと思う。
マルケスとの差が縮まり始めたとき、オリベイラは「勝てるかも」と思った。しかし、再びリードを広げられたことで、彼は諦め、ペースを落とした。
次なるサプライズはチャンピオン争い
今年の3月、ドクターからトレーニングの許可が下りたとき、マルケスの右腕はやっと歯磨きができる程度の回復状況だったという。4月中旬に復帰した第3戦ポルトガルGPでは「速かったときのマルク・マルケスに戻るには相当時間がかかると思った」と自ら分析したが、それからわずか2カ月で、最高峰MotoGPクラスの頂点に立った。
「次のオランダGPからは、再び、ドイツまでの5戦のように厳しい戦いになる」と語るが、今回の優勝はマルケスが本来の走りに大きく近づいていることを証明した。シーズンは、まだ中盤戦。チャンピオン争いに復帰するという、次なるサプライズに期待したい。