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【絶対王者復活】左回りのドイツGPで発揮された「ライバルに勝つことを諦めさせる」マルケスの強さの本質とは
posted2021/06/23 17:02
text by
遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
ドイツGPが開催されたザクセンリンクは、特にコース前半にアップダウンが多く、タイトなコーナーが連続する、コース攻略が難しいサーキットのひとつ。ブラインドコーナーも多くヨーロッパでは珍しい左回りのサーキットだ。
今年のザクセンリンク、MotoGPクラスで勝利したのは、左回りのダートトラックで鍛え、左コーナーを得意とするマルク・マルケスだった。
予選5番手から決勝に挑んだマルケスは、得意のロケットスタートを決めてオープニングラップに首位に浮上。それからは一度も首位を譲ることなくトップを快走し、2019年の最終戦バレンシアGP以来、2年ぶりの優勝を果たした。
パルクフェルメに戻ってきたマルケスは、スタッフから盛大な祝福を受け、涙した。怪我からの復帰戦となった今年4月の第3戦ポルトガルGPでは、7位という結果ではなく復活できたことに感極まって涙した。今大会の涙は、再び優勝できた喜びの涙だった。
コロナ禍の中で行われた2020年は、デビュー以来順風満帆だったマルケスにとって最大の試練のシーズンとなった。MotoGPクラスの開幕戦となった7月のスペインGPで転倒し、感染による偽関節などで3度の手術を受けた。9カ月間の治療とリハビリを経て今年4月に復帰するも、本来の走りにはほど遠いレースが続いた。ドイツGPまでの3戦は転倒リタイヤと厳しいレースを続けていたが、ザクセンリンクではMotoGPクラスで8大会連続、125cc、Moto2クラス時代を入れると11大会連続で優勝するという快挙を成し遂げ、世界のレースファンを驚かせた。
戻ってきた王者の走り
勝因はいくつもあるが、ひとつはパッシングポイントが少ない難コースで、2列目5番手から1コーナーで2番手につけた積極果敢な飛び出し。
そして、レース前半に何度か小雨が降ってライバルたちがややペースを落としたとき、マルケスはそれまでと同じペースをキープし、2位以下との差を一気に広げた。
さらにレース終盤、追い上げてきたミゲール・オリベイラとの戦いでは、タイム差を確認しながらペースをコントロールし、振り切った。
いずれも、怪我をする前にライバルを圧倒してきた強さが発揮された形だ。