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【引退】宝石店で働いて…最後のシーズンに輝きを取り戻した、フィギュア・本郷理華の尽きせぬスケート愛
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2021/06/20 11:01
競技者としてはラストダンスとなった昨年12月の全日本選手権。フリーの楽曲は映画「Ghost in the Shell/攻殻機動隊」より「Reawakening」
その前の16-17シーズン開幕前に左足首骨挫傷の怪我を負った。
「いい演技ができない理由は怪我がすべてじゃない、怪我していてももっと工夫できたんじゃないかと考えていて」と怪我の話を自ら語ろうとはしなかった。
だが一方でこうも口にしていた。
「やりたい練習ができないし、『今日はちょっと痛いな』と思いながらやっていても、自分のレベルが下がった気がしました」
結局、16-17シーズンは、それまで2シーズン続けて上がっていたグランプリシリーズ大会の表彰台を逃すなど、成績が下降した。他の選手の欠場により四大陸選手権と世界選手権に急きょ出場することになったが、タイトなスケジュールで、四大陸選手権は10位、世界選手権も16位にとどまった。17-18シーズンもグランプリシリーズの表彰台には立てず、オリンピックのプレシーズンの余波は決して小さなものではなかった。
2019年8月には休養を発表。休養ではあったが、やめたいという思いが強かった。
スケートを離れて得た心境の変化
心機一転、ジュエリーショップで働き始めた。
それが気持ちに変化をもたらした。これまでずっとフィギュアスケートひと筋だった。フィギュアスケートが生活の中心にあった。そこからいったん離れたことで、自分にとってフィギュアスケートがどういう存在なのかを見つめ直すことができた。「また滑りたい」と思えた。
復帰を決めると、昨シーズン、中部選手権から段階を踏んで、昨年12月の全日本選手権に出場。18位で大会を終えた本郷は晴れやかだった。
「滑れる喜びを感じられたことは満足しています。今はほっとした気持ちと、滑れてよかったという感じです」
6月16日の引退発表の翌日、テレビ番組に出演した本郷は語った。
「すごく充実したスケート人生だったかなと思います」
「(今後は)『これをやる』と1つには決めきれてないですけど、スケートが大好きなので、これからもかかわっていけたら」
「滑る機会があったらもちろん滑りたいし、別の形でもかかわれたらいいなと思います」
競技人生でいちばんの目標としていたオリンピック出場はかなえることはできなかった。でも、フィギュアスケートが好きで、これからもかかわっていきたいと思える。
競技を全うしての充足と、尽きせぬスケートへの思いがそこにあった。