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【引退】宝石店で働いて…最後のシーズンに輝きを取り戻した、フィギュア・本郷理華の尽きせぬスケート愛
posted2021/06/20 11:01
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
6月16日、フィギュアスケートの本郷理華が引退を発表した。
本人は決断の理由をSNSでこう綴っている。
「全日本を終えてたくさん考えて、自分の今の実力、結果、コロナでカナダへ行く事ができない状況などあと一年やるかやらないか迷った時、現実的に考えて引退を決めて次の道に進み、頑張っていこうと決めました」
その前後の文章から伝わってくるのは、やりきった思いだった。
氷上に華やかな彩りを添えるスケーターだった。
身長は167cm。長い手足をいかしたダイナミックな演技は多くの目を惹きつけた。
「シニアになった頃は、極端に言うとジャンプが決まればいい演技だと考えるくらい。でも周囲の選手と自分を比べて、表現も大事だと感じました。(鈴木)明子さんから表現を教わるようになったこともあります」
表現面にも磨きをかけたいと意識し、『リバーダンス』など印象的なプログラムを見せてきた。
広く注目を集めたのは高校生のとき。
高校2年生時の全日本ジュニア選手権で優勝し、高校3年生になった2014-2015シーズンにシニアに移行する。本郷にとってグランプリシリーズ2試合目のロステレコム杯で優勝を遂げると、グランプリファイナルにも欠場選手が出たことによる繰り上げで出場。四大陸選手権、世界選手権にも出場し、シニア最初のシーズンを駆け抜けた。
その後も世界選手権に出場するなど第一線を走る中で、挫折も味わった。
多くの選手がそうであるように、本郷にとってオリンピックは特別な目標であり、その競技人生の折々に影響を与えた舞台だ。
見果てぬ夢、オリンピック
トリノ五輪で金メダルを獲得する荒川静香を観て「オリンピックを目指そう」と思った。練習拠点であった仙台のリンクが閉鎖された小学4年生のとき、名古屋に移住した。それもオリンピックの夢あればこそだった。
ソチ五輪シーズンの2013年、ジュニアだった本郷は最終選考大会の全日本選手権を観客席からみつめた。
「(最終グループは)観ているだけでも緊張して……。具体的には説明できませんが、いつもの大会とは違いました。4年後は自分がここ(最終グループ)にいることができるように頑張ろうと思いました」
しかし本人がその後目指した2018年の平昌五輪の切符を手にすることはできなかった。