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“一人暮らしと公園での練習” 坂本花織が困難を逆手に掴んだ手応え【シーズン最後に自己ベスト更新】
posted2021/04/25 06:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
JIJI PHOTO
会心の笑顔とともに、大会を終えた。
4月15日から17日にかけて大阪で行なわれたフィギュアスケートの世界国別対抗戦。日本の女子シングル代表として出場した坂本花織には、ショートプログラム、フリーともに心からの喜びを示すことのできる大会となった。
ショートプログラム『バッハ・ア・ラ・ジャズ』はノーミス、パーフェクトな演技を見せる。6位の成績に終わった世界選手権でエッジエラーをとられたトリプルルッツも成功させ、課題を克服。
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「(帰国してからの)2週間、ずっとルッツを練習しました。スケート人生で初めてと言っていいくらい、ルッツのエッジの練習をしてきました」
練習中、映像に撮って確認し、コーチやジャッジにも見てもらったという。その成果を発揮し得点は77.78点。自己ベストを更新した。
フリーでも勢いは止まらない。プログラムは2シーズンにわたって使用し、今回が最後となる『マトリックス』。冒頭のダブルアクセルをきれいに決めると、持ち味の高さのあるジャンプ、激しい動作、めりはりのついた振り付けなど、プログラムの世界を存分に披露する。
3回転サルコウが回転不足をとられたが、ブラッシュアップしてきたこのプログラムの集大成と言うべき演技で締めくくり、フィニッシュの直後はガッツポーズを見せ、全身で喜びを示した。得点は150.29点でショートに続き自己ベストを更新。国別対抗のため表彰はないが、個人の得点ではフリーで2位となった。
「細かいミスはあったけれど、150点というのは今シーズン頑張ってきた土台が認められたということなのかなと思います」
その言葉の通り、これまでのスケート人生の中でもひときわスケートと向き合い、努力を重ねてきた1年だった。
不甲斐ないシーズンに流した涙
昨シーズンは「練習なり、取り組みが甘くて」、グランプリシリーズは参加した2大会ともに表彰台を逃した。シーズンを通してグランプリシリーズの大会で3位以内に入れなかったのはシニア3シーズン目で初めてのこと。全日本選手権でもやはりシニアに上がって初めて表彰台から外れる6位。シニア1年目に平昌五輪に出場し、2年目は世界選手権代表となって5位入賞を果たすなど日本女子の中心に位置する1人となった姿とはかけ離れていた。
坂本は6位に終わった2019年全日本選手権の試合後、涙した。ただ涙するだけではなかった。「もうこんな思いを繰り返したくない」と再起を誓った。