確かに、EURO1996でのガスコインを思わせる。個人的に、前髪のラインは映画『ダム・アンド・ダマー』でジム・キャリーが演じたおバカな主人公風だと密かに思っていたが、金髪姿に変身した今夏のフォデンは25年前のガッザのごとく、相手を小馬鹿にするような個人技で母国ファンを沸かせて欲しいものだ。

対戦相手の監督から敬愛のハグで称えられた

　21歳になったばかりの若者に、余計なプレッシャーをかけるものではないという意見もあるかもしれない。だが、フォデンは肝っ玉の大きさもスペシャル級だ。

　その事実は、注目を浴びないはずがない初の国際舞台を前にブロンドの短髪を披露した行動が物語っている。当人は「比較は気にならないし、ピッチ上でちょっとガッザっぽい味を出そうとしてみるのも悪くないよね」とまで言っている。

　代表戦のピッチで、特別なパフォーマンスを要求されているわけではない。ありのままの姿を見せてくれさえすれば、つまり、ワールドクラス揃いのマンチェスター・シティにあって、先発する度にチームのベストプレーヤーと思わせた今季の姿を見せればいいのだ。

　例えば、勝利後に対戦相手のディーン・スミス監督から敬愛のハグで称えられた4月のアストンビラ戦。3トップ左サイドでの先発したフォデンは、ロングボールの落下地点で左足を伸ばすと、密着していた相手右SBなど存在しないかのように、しなやかなタッチと素早いターンでスペースに向かっていった。チームの全2得点に絡んだマン・オブ・ザ・マッチのプレーは、言うなれば“ジョイ・オブ・ザ・マッチ”だった。

　さり気ない完璧なタッチ、瞬時の加速による見た目以上の速さ、滑らかでいて切れ味も鋭いドリブルといった魅力は、ユース時代からの彼の武器。シティのU-18チームで10番を背負っていた2017年のFAユースカップ決勝、約20メートルの中央突破からゴール右下隅に流し込んだ第1試合での得点で、相手チェルシー守備陣は無力に立ちすくむだけだった。

サウスゲイト監督は若手攻撃トリオの揃い踏みには慎重

　翌年10月のU-21代表デビュー戦では、2ゴールのドミニク・キャルバート・ルーウィン以上に、随所で技術、自信、そして勇気を感じさせた姿が印象に残っている。フォデンは当時からガスコインが引き合いに出されていたが、走行中のボールタッチの少なさ、体を左右に振るフェイントを見せつつ自らの足元にボールが吸い付いているようなドリブルは、「ウェールズの魔法使い」と呼ばれたライアン・ギグスをも彷彿させた。

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