国内メディアでは「EURO96ヴァイブ」と呼ばれている。

　当時、「フットボールが帰ってくる」というサビの歌詞が印象的なテーマ曲『スリー・ライオンズ』がサントラのようだったイングランドで、高揚感に満ちたフィーリングを体現していた選手はポール・ガスコインだった。

　EURO1996と言って思い出すのは、「ガッザ」の愛称で親しまれた天才が英国勢同士の“ホーム・カントリー対決”となったスコットランド戦で披露したゴールだろう。左足でボールを頭越しに浮かせて相手をかわし、落ちてきたところを右足ボレーで捉えた一発は、ウェンブリー史に残る名場面。メディアはもちろん、庶民の頭でも幾度となくリプレーが繰り返されてきた。

綺麗に脱色されたヘアスタイルは「完全ガッザ・モード」

　奇しくも、同じグループステージ2戦目にスコットランド戦が控えている今大会の開幕直後には、ほぼ毎日のように「ガッザ」の雄姿が見られた。

25年前のチームを牽引したガスコイン。スコットランド戦で披露したゴールは今も語り草となっている©Getty Images

　ガスコインの流れるような一連の動作に「Oh, brilliant! Oh, yes!!」と声を上げたBBCテレビ実況担当のセリフは、このロンドン在住日本人の脳裏にも刻まれている。

　コントロールもフィニッシュも最上級。誰が見ても「ブリリアント（すごい！）」、「イエス（よっしゃ!!）」と喜びと興奮を覚える超絶プレーをやってのけたガスコインは、観る者にサッカーの楽しさと素晴らしさを強烈に訴えかける“スペシャルな選手”だった。

　当たり前のようでいて、時として非常に貴重に感じられるサッカーの魅力。猛威を振るうコロナウイルスによる開催延期、強欲丸出しの欧州スーパーリーグ創設騒動などを経て幕を開けた今回のEURO2020では、サッカーというスポーツが持つ純粋な魅力を堪能したいと願わずにはいられない。

　人々が期待を寄せる現役の「フィーリング体現者」、最新の「ガッザ後継者」でもある選手がフォデンだ。

　攻撃的MFの豊作期を迎えている現在のイングランド代表だが、フォデンに対する見方は特別。開幕2日前に披露された金髪が話題となる前から注目度は高い。綺麗に脱色されたヘアスタイルは、メディアでは「ガッザ・ヴァイブ」やら「完全ガッザ・モード」などと言われている。

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