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女子サッカー“国内公式戦がない”? 「100%五輪のため」田中美南27歳が“短期の海外移籍”を選んだワケ 

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了戒美子

了戒美子Yoshiko Ryokai

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photograph byGetty Images

posted2021/06/17 17:01

女子サッカー“国内公式戦がない”? 「100%五輪のため」田中美南27歳が“短期の海外移籍”を選んだワケ<Number Web> photograph by Getty Images

女子サッカー日本代表候補の田中美南は、「五輪のため」に短期での海外移籍を決断した選手のひとりだ

 田中には苦い過去がある。それは田中自身のコメントにあるW杯だ。

 2019年フランスW杯、田中は代表メンバーから落選した。当時、所属していた日テレ・ベレーザの絶対的エースとして、16年から19年まで4シーズン連続で得点王にも輝いた。MVPにもW杯前の18年と19年に選出されている。ベストイレブンにいたっては、15年から6季連続だ。それでも、19年フランス大会のメンバーには選ばれなかった。

 これだけやっているのに、結果を出しているのに……と思わなかったのだろうか?

「正直思いました。意味わかんないと」

 そう思うのも当然である。ただ、自身が監督でない以上、選手は常に第三者を納得させるプレーを見せなくてはならない。

「メンバー発表直後にチーム(INAC)でカップ戦とか試合が続いていたので、腐ったら負けだと思いました。そこで腐って、周りが『やっぱダメだね』ってなるより、腐らずに『なんで入れなかったんだ』って周りが言うくらいのほうが気持ちいいから。そのカップ戦では得点王かな(10試合出場11得点で得点王に)?  とにかくチームを優勝させたって言えるぐらいの自信がある。そこを乗り越えたところは大きいと言うか、頑張ったなって」

 田中は自らのプレーで、悔しさをはねのけた。

短期の挑戦で学ぶ「強い相手とどう戦うか?」

 そして、W杯での悔しさを二度と経験しないために、海外移籍を決断した。レバークーゼンでは10試合に出場し(先発9試合)、4得点。試合をし続ける日々を手に入れただけでなく、慣れない環境でもまずまずの結果を出した。

「この半年で誰よりも得たものは大きいと思えるから、すごい自信にもなるし、前向きなチャレンジだったなって」

 つかんだ自信を発揮する場が、五輪であれば言うことはない。

 ドイツでプレーすることで、得たものは様々だ。たとえば、日本にいたらフィジカル的なぶつかりあいを避けて引いて駆け引きをすることが多かった。だが、ドイツではまず勝負。戦うことの大事さをあらためて知った。また、バイエルンとの対戦など、チャレンジャーの立場で試合に臨む経験も積んだ。日本でプレーした日テレ・ベレーザやINAC神戸は強豪だったため、迎え撃つ側だった。

「ベレーザでは、相手のイヤなとこをわかった上で試合を展開する、主導権を握るということをやってきたから、その逆の立場に立ったときにどうするかというのがわかったと言うか。こっちがどう動いても試合中に修正をかけてくるから、あーやっぱりそうだよなと考えながらプレーできた。自分が下位の側に立ってトップチームとやってどれだけやれるかというのは新鮮でしたね」

 強豪と対戦する大舞台で、この経験が活きないわけがない。

【次ページ】 なでしこのW杯優勝に憧れて……

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