球体とリズムBACK NUMBER
得点源ケインと新世代イングランドvs35歳モドリッチ健在のクロアチア EURO恒例“いきなり大一番”が見逃せないワケ
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2021/06/12 17:03
ロシアW杯準決勝でのケインとモドリッチ。EUROで実現するいきなりの再戦はどのような結果となるか
ラキティッチらが代表を去ったクロアチアは……
その後のEURO予選はどちらも首位通過しているが、イングランドの方が力強い足取りを見せた(8試合7勝1敗、37得点6失点)。クロアチア(8試合5勝2分1敗、17得点7失点)では、W杯後にFWマリオ・マンジュキッチとGKダニエル・スバシッチ、SBイバン・ストゥリニッチが代表から退いており、さらにEURO予選後の2020年9月にはイバン・ラキティッチが続いた。
つまり、パンデミックが起こらずに本大会が開催されていれば、このエレガントな中盤の戦士はそれを最後の桧舞台にできていた可能性もあったわけだ。
続く2020-21ネーションズリーグでは、ポルトガルやフランス、スウェーデンと同居するグループで1勝5敗の3位となり、辛うじて降格を免れている。今年3月に始まったW杯予選でもスロベニアを相手に黒星スタートを切り、直近の週末のベルギーとの親善試合も0-1で敗北。不甲斐ない成績と相まって、クロアチアにとっては喪失感の大きな3年間だったと言える。
新陳代謝を高めた理想的なイングランド
かたや、イングランドは新陳代謝を高め、理想的な日々を過ごした。EURO予選中からメイソン・マウントやデクラン・ライスらが中盤で台頭し、さらに今季、マルセロ・ビエルサ監督の指導で覚醒したリーズ・ユナイテッドのカルバン・フィリップスもネーションズリーグから代表入り。
またマウントやリース・ジェイムズ、ベン・チルウェルはチェルシーで主力として今季のチャンピオンズリーグを制し、決勝で敗れたマンチェスター・シティにはフィル・フォデン、ラヒーム・スターリング、カイル・ウォーカー、ジョン・ストーンズが名を連ねていた。加えて、17歳の天才MFジュード・ベリンガムや21歳のウイングのジェイドン・サンチョはドルトムントで急成長を遂げ、アーセナルの大人びた19歳、ブカヨ・サカも一気に代表に上り詰めた。
そして、エースストライカーのハリー・ケインは今季のプレミアリーグの得点王であり、アシスト王だ。イングランドは1年間の開催延期と26人への登録メンバー増加の恩恵を、最大限に受けるチームのひとつだ。
とはいえ、クロアチアを侮ることなど、絶対にできない。