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高校女子野球の甲子園開催を「正面から反対したのは私です」 25年前、高野連が下した「女子大会の開催は時期尚早」という判断

posted2021/06/09 17:00

 
高校女子野球の甲子園開催を「正面から反対したのは私です」 25年前、高野連が下した「女子大会の開催は時期尚早」という判断<Number Web> photograph by 作新学院高校提供

2019年、第23回夏の選手権大会で初優勝を飾った作新学院

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飯沼素子

飯沼素子Motoko Iinuma

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作新学院高校提供

 たくさんの人たちが願っていた「高校女子野球の決勝を甲子園で」が、2021年8月、第103回夏の甲子園大会休養日に実現する(22日を予定)。長く女子の野球に冷淡だった日本高野連は、なぜこのタイミングで「女子も甲子園」を許可したのか。そしてこれからの課題は。

 全国高等学校女子硬式野球連盟(以下女子高野連)と日本高野連(以下高野連)との交流の歴史、および関係者への取材から、その真相を探った(全3回の1回目/#2#3へ続く)。

 女子高校生が甲子園球場でプレーする。この歴史的な英断がなされた背景には、高野連、阪神甲子園球場、朝日新聞社、女子高野連、およびその上部団体である全日本女子野球連盟(硬式)の合意があったと高野連は説明する。

 最初に動いたのは高野連である。

「当連盟の女子登録選手が、侍ジャパン女子代表のトライアウトに参加する場合を協議するなかで、女子高校野球の組織、規約等について学ぶ必要があると考え、令和2年2月13日、全日本女子野球連盟、全国高等学校女子硬式野球連盟、当連盟による意見交換会を行いました。

 この会では、双方の連盟の歴史、規定などを学び、今後の野球発展に向け、相互に協力できることを考えていくとの認識で一致し、引き続き、双方の大会の視察や情報交換会を行うことになりました。

 こうした話し合いをするなかで『阪神甲子園球場で女子の決勝ができないか』という案が出されました。『そうすれば、休養日を野球振興のために有意義に使うことができる』などという声も出ました」

 こうして2021年(令和3年)1月20日、女子野球の2連盟から「高校女子野球決勝の甲子園開催を目指すことを理事会で決定した」という連絡が入り、4月28日、高野連の第1回理事会で、第25回全国高等学校女子硬式野球選手権大会決勝の、甲子園開催が承認された。

甲子園での開催実現には木戸克彦の尽力も

 甲子園球場や阪神電鉄を口説いたのは、1985年に阪神タイガースが優勝した時の正捕手、木戸克彦だったという。木戸は2018年に侍ジャパン女子代表ヘッドコーチを務めて以来、女子野球の振興に力を注ぐようになり、現在、阪神で球団本部プロスカウト部長を務めるかたわら、女子硬式野球クラブチーム「阪神タイガースWomen」の指導にも顔を出す。今回の開催は木戸の尽力なくして語れないと言う関係者は多い。

 高野連とともに1915年から夏の甲子園大会を主催する朝日新聞社も、

「弊社は100年以上にわたり教育の一環としての高校野球の運営に取り組んできました。女子の高校野球も教育の一環、人格形成という点では男子と同じです。女子の大会が発展することは、男女を問わない高校野球の発展に、また野球界全体の発展につながることだと考えます」

と言い、女子の連盟と甲子園球場が話を進める際には仲立ちを務めたという。

 実は同社は日本の女子硬式野球の誕生に深く関わっており、それだけに喜びもひとしおと考えるが、これについては後述する。

【次ページ】 主催は高野連ではなくあくまでも女子高野連

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