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《暴力事件を起こし、逃避するかのように韓国へ》市民団体が異例の抗議デモ...Kリーグ2部で再起を目指した道渕諒平、わずか3カ月で退団
text by
キム・ミョンウKim Myung Wook
photograph byJ.LEAGUE
posted2021/06/04 17:00
2020年10月に仙台を解雇された後、今年2月にKリーグ2部・忠南牙山FCに加入した道渕諒平。2ゴールを挙げる活躍を見せたが、市民の反発もあってクラブを退団することになった
もちろん、J1リーグで主力としてプレーしていた実績のある選手だけに、忠南牙山は当然、戦力として見ていた。
道渕には更生のチャンスが訪れ、かつクラブ側は比較的、安い年俸で契約ができる――と、双方の意思が合致したのだろう。
しかし、リスクが大きいことも想像できていたはず。スポーツ・芸能サイト「OSEN」のウ・チュンウォン記者は、当時、こんな疑問を呈していた。
「クラブ側は法的に処罰されていない選手なので、所属させるのは問題ないと言っていました。果たしてそれが正しい選択なのか」
ウ記者によれば、道渕は昨年末に代理人を通して、Kリーグ1部の蔚山現代FC(ウルサンヒョンデ)への入団を打診していたという。その加入は実現せず、今年に入ってから他クラブを探していたところ、忠南牙山が獲得したというわけだ。
実際のプレーでは、今季開幕から7試合に出場し、2ゴール1アシストでチームに貢献。かつてガンバ大阪や柏レイソルでプレーしたパク・ドンヒョク監督も「彼はとても反省している。謙虚で一生懸命やる姿が見てとれる」と語っていた。
風当たりの強い女性暴力、過熱する抗議デモ
ただ、韓国では社会的に女性暴力への風当たりは強く、非難を免れるのは難しい。道渕の退団を求める市民団体の抗議デモは日に日に過熱し、こんな声明も発表された。
「忠南牙山は4カ月前に悪質な暴力事件を起こし、逃避するかのように日本から韓国へきた道渕諒平選手を受け入れた。それだけでなく、忠南女性、市民社会団体が全面的に反対するのを押し切り、3月13日のホームでの試合に起用した。その日は特に家族での観客が多く、ボランティアで入場した青少年が多かった。その日、少年たちは何を感じただろうか。成果だけ出せば、他人に加えた暴力は問題にならないという間違った認識が、無意識に刻まれた日ではないだろうか。スポーツ界の成果主義を我々の社会は警戒しなければならない」
さらに忠南牙山FCは2020年シーズンからホームタウンを牙山市とする「市民クラブ」(前身は韓国警察が母体の牙山ムグンファFC)に移行しており、多額の支援金がチームに投入されていた。牙山市長がクラブオーナーということも、市民の反発に拍車をかけた。