月刊スポーツ新聞時評BACK NUMBER
契約解除の清田育宏に朝乃山の“夜遊び”…一緒にいた記者に書いて欲しい「下世話な話題」に隠れている“大事なもの”とは?
posted2021/06/03 11:00
text by
プチ鹿島Petit Kashima
photograph by
JIJI PHOTO
面白い社説があった。産経新聞の「緩むスポーツ界 使命感持って行動管理を」(5月26日)である。
《このところ、新型コロナウイルス禍を侮るかのような無責任な行動が、競技者の間で相次いでいる》
ここで名指しされているのが大相撲の大関朝乃山とプロ野球ロッテの清田育宏だった。朝乃山は夏場所前に神楽坂のキャバクラを数回訪れていたと『週刊文春』が報じ、当初は否定していたがその後に認めた。協会の定める感染防止のガイドラインに違反していた。ロッテの清田は知人女性と複数回会うなど球団のルールに反していたとして契約を解除された。
《清田は昨年9月にも不要不急の外出を繰り返して無期限謹慎処分を受け、今月1日に処分が解けたばかりだった。》(社説)
産経社説はこのあと「懸念されるのは、プロスポーツ界の緩みが、今夏の東京五輪・パラリンピックにまで水を差しかねないことだ」と急に五輪の話になる。「大会の安全度をさらに高めるためには、一人でも多くの選手や大会関係者が接種するしかない」と。
つまり、朝乃山と清田を見てると不安だから「五輪選手のワクチン接種をすすめろ」と言いたげな展開になっているのだ。すべての道は五輪に通じる。
ドン・ファン、ゲッツーでアウト!
ではスポーツ紙ではこの2人はどう報じられたのか。まずスポーツ報知の清田のプロフィール(5月24日)に目がいった。「10年の日本シリーズ第3戦で決勝打。15年にはベストナイン、ゴールデン・グラブ賞」。
最後に「既婚」とあった。
わかってます。だから騒動になっているんです……。
もっともインパクトがあったのがこれ。
『清田 契約解除 不倫“ゲッツー”でアウト』(デイリースポーツ5月24日)
「度重なる」をゲッツーで表現してしまった。
東スポは無期限謹慎処分を解除された途端に別の女性と密会していた清田を「幕張のドン・ファン」と名付けた。
紀州のドン・ファンが元ネタだが、東スポはこの手のネーミングは十八番である。IOCのバッハ会長をワシントン・ポストのコラムがぼったくり男爵と名付けたのに乗じて、緊急事態でも五輪ができると言ったコーツ氏を「はったり男爵」とネーミング。現在はぼったくり&はったり、そしてアルマゲドンじいさんとまとめて「男爵トリオが失言三重奏」と報じている。