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ユーべ王朝崩壊! 攻撃的インテルが11年ぶりに優勝できたワケ…大一番での「ウノ・ア・ゼロ」と闘将コンテの“勝利欲”
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/05/19 17:02
久々の国内制覇に大喜びするインテルのメンバーたち。サポーターたちもスクデット獲得に狂喜乱舞した
攻撃の核であるルカクと10番を背負うFWマルティネスの"Lu-Laコンビ"は第37節終了現在、23ゴールと16ゴールを積み重ねている。インテルの歴史において前線のデュオがともに15得点以上挙げたのは、1958-59年シーズンのフィルマーニ&アンジェリッロ以来62年ぶりのことだ。
闘将すらも憧れた難敵・アタランタ
しかし、ボンバー(爆撃機)とバンカー(陣地壕)を備えるに至ったインテルであっても、アタランタは難敵中の難敵だった。
彼らは、当のインテルがなし得なかった2季連続CLベスト16進出を果たし、アウェーでの強さも際立つリーグ最強の攻撃型チームだ。
就任1年目の昨年1月、コンテはアタランタとの対戦で打ちのめされた。スコアこそ1-1のドローだったがインテルは翻弄され、90分間を通してボールポゼッションでもシュート数でも圧倒された。試合後、闘将コンテは「できるならあんなサッカーがしてみたい」と敗北感に打ちひしがれた姿を晒した。
果たして、今年3月、1シーズン余を経てインテルを完全に自分のチームとしたコンテは、一度は抱いたアタランタの挑戦的プレーへの憧れを己の中で葬り去っていた。
2年連続セリエA最優秀監督の栄誉を得た名将ガスペリーニのチームと、点の取り合いをしても互角にやり合える戦力と自信はある。
しかし、コンテはあくまで勝ち点3を取ること"のみ"に執心した。
徹頭徹尾、アタランタのチャンスを潰した
本拠地サンシーロでのゲームだというのに、インテルの選手たちは徹頭徹尾、アタランタのチャンスを潰すことに専心した。
相手に覆いかぶさり、ファウルを仕掛け、パスを繋がせない。枠内シュートはシュクリニアルの1本だけだった。
ルカクは不発だったが、エースを抑えられても強豪相手に最小スコアで競り勝ったことは、ロッカールームにかつてないほどの手応えをもたらした。
敗れたアタランタのMFデローンは「インテルの方が上手だった」と首位チームの試合巧者ぶりを認めた。
コンテ率いるインテルは、アタランタを自分たちの土俵に引きずり込んで勝ちをもぎ取ったのだ。