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【16日代表決定戦】男子体操3強が挑むNHK杯決戦 五輪の“2枠”は橋本、谷川、萱、誰の手に?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PHOTO
posted2021/05/15 06:00
4月の全日本選手権で2位の谷川航(左)、優勝した橋本大輝(中央)、3位の萱和磨(右)
その決勝をあらためて振り返れば、橋本の豊かな可能性が伝わってくる。オフシーズンには難度の高い技の習得に力を注いだという。その成果もあり、各種目で高いレベルでバランスよく演技できることを示した。まさにオールラウンダーであり、内村を継承すると言われるゆえんでもある。
Dスコア(技の難度点)で稼げる魅力の一方で、いかにその完成度を高めたパフォーマンスを大会でミスなく披露できるかが課題にもなるが、まずはその難度の高い技に取り組む姿勢にこそ、着目したい。
また、向こうっ気の強さも橋本の特徴だ。
NHK杯へ向けて、こう語る。
「エースだと言われるくらいの実力を見せて、代表入りをしたいです」
代表の座を懸けた三つ巴の争い
橋本の予選、決勝の合計173.365点に次ぐ2位には172.728点で谷川航、3位には172.696点で萱和磨が続く。
谷川は得意とする跳馬で最高難度の「リ・セグァン2」を成功させるなどした。
リオのときは代表は遠い存在だったが、その後地力を上げていき、世界選手権などで活躍、東京を視野に入れて進んできた。
「大きなミスがなく、終えられてほっとしています」と全日本を振り返る谷川は、「(オリンピックは)小さいときからの夢なので、なんとしても出たいです」「NHK杯では優勝を目指します」と意欲を示す。
萱はリオのとき、代表選考の争いでわずかに届かず、補欠として代表チームに帯同した。その悔しさをばねに東京を目指し、リオ後は日本代表でも主軸として活躍してきた。
ミスのない安定感を持ち味とする萱は、昨年の全日本選手権で優勝、連覇のかかった今回も優勝が見えていたが、最終種目の鉄棒でミスが出て3位。
「1000回に1回のミス」と表現した萱は、こう語っている。
「ミスをしないのが持ち味の自分としてはこのミスは忘れないと思います。オリンピックで金メダルを獲るという思いは変わらないので、もう一度気を引き締めて練習したいです」
全日本で上位につけた3人の選手は、それぞれの過程でここまで来た。そして全日本でもそれぞれに成果や課題を感じ、NHK杯へ進もうとしている。
3人の選手ばかりではない。上位2名での代表入りを目指し、あるいはその後の2名の選考を視野に、選手たちはNHK杯の舞台に挑む。
2016年のNHK杯の熾烈な勝負も思い起こされる。当時の選考基準ではすでに内定の出ていた内村を除きNHK杯最上位の選手1名が内定。大会では加藤凌平がわずか0.100点差で田中佑典を上回って内村に続く2位となり、代表を決めた。
2021年のNHK杯はどんな結果を迎えるのか。勝負のときが近づいている。