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【体操代表最終選考】最年少代表から55位予選落ちまで低迷…平岩優奈の恐怖心を打ち消した「結果よりも大切なこと」とは
posted2021/05/09 06:00
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph by
AFLO
体操の東京五輪代表選考を決める大一番、NHK杯(5月15・16日。長野県・ビッグハット)の開幕が近づいてきた。この大会に、積年の思いをかけて挑む選手がいる。
平岩優奈、22歳。6歳から体操を始め、以降15年以上にわたって体操人生を歩んできた今、念願とする初めてのオリンピックへの切符を現実のものにしようとしている。
体操女子の五輪代表枠は計4名。そのうちの3名は、4月の全日本選手権と今月のNHK杯の合計得点における上位3名が自動的に選出される。
選考の前半戦とも捉えられる全日本選手権で、平岩は3位となり、代表圏内につけた。それは2014年以来、実に7年ぶりの全日本での表彰台であった。しかもその間は大会にエントリーしたものの棄権、あるいは出場したときでも2桁の順位で、予選落ちに終わっていた。
その時期からすれば、鮮やかな復活劇と言っていいパフォーマンスを見せた今年の全日本選手権では、まず予選で3位につける。決勝でも4種目を通して上位となる安定感のある演技でまとめ、予選より得点を上積みし、3位になることができた。
「今やれることをやりきりました」
高揚があったのだろう、ときにインタビュアーの質問を聞き返す場面もあった試合直後のTVインタビューでは、笑顔に終始した。
将来を嘱望された平岩の低迷のきっかけ
これまでの歩みを振り返ると、そもそも平岩は早い時期から全国大会で活躍し、将来を嘱望される存在だった。
大きな注目を集めたのは2014年のとき。15歳で出場した全日本選手権で3位となり、全日本種目別選手権では平均台で優勝。同年の世界選手権代表に選ばれる。当時の代表メンバー中、最年少であった。
だが、念願の舞台に立つことはできなかった。
開催地に入ったあと、大会を前にしての段違い平行棒の練習中、右手中指中手骨を骨折する。出場は困難であるとの判断から、補欠の選手との交代をよぎなくされた。
それを機に、長い低迷に入る。
「体操は好きだけど、練習が怖くて」
「悔しさが強くて、うまく切り替えられなかったです」
怪我以上に心に大きな傷を負い、容易に立ち直れなかった。