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長谷部誠“驚異の37歳”独占インタビュー 「現役引退したらやっぱり監督になりますか?」に「はい」と即答しない理由
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byRyu Voelkel
posted2021/05/07 17:04
1026号の表紙など長谷部の撮影は本拠地ドイチェバンク・パークで行われた。背景はクラブの象徴である犬鷲のロゴ
「ドイツでも僕と同世代の選手たちがかなり現役を退いているんですよね。例えばヴォルフスブルク時代の元チームメイトで、今でも仲の良いマルセル・シェーファーは現在、ヴォルフスブルクでスポーツディレクター職に就いているんです。彼は現役を引退してからすぐにクラブフロントの勉強をして重職に就いていて、しかも僕よりも1歳歳下なんですよ。その意味では、日本とドイツでは役職に関する考え方が異なるように感じます。日本の選手は現役を引退した直後に指導者の道へと進む方が多いじゃないですか。もちろんドイツでもそのケースはあるんですけど、それほど多くないような気がします。逆にクラブフロントや代理人になる方が多いんじゃないですかね」
彼の言う通り、現役時代に幾多の実績を築き上げたブンデスリーガーが指導者としても大成するのは稀です。一方で、クラブフロントに転身したパターンでは成功例が幾つかあります。
現在のブンデスリーガクラブでは元ドイツ代表FWのカール・ハインツ・ルンメニゲがバイエルン・ミュンヘンの最高経営責任者(CEO)ですし、その後任には元ドイツ代表GKのオリヴァー・カーンが内定しています。他にもレヴァークーゼンのスポーツディレクターは元ドイツ代表FWのルディ・フェラーですし、シュトゥットガルトのCEOも元ドイツ代表MFのトーマス・ヒッツルスペルガーと、名選手がクラブの要職に就くケースは枚挙にいとまがありません。
一番影響を受けた監督は?「岡田さん、ザッケローニさん……」
それでも、やっぱり個人的にはビシッとスーツを着こなしてサイドライン際で選手へ指示を送る姿を見たい思いもあるんですよね――その点を今一度問いかけると、彼がこれまで出会ってきた指導者たちへの話題へ変わりました。
<サッカー面はもちろん、一人の人物として尊敬している監督は誰?>と聞いたところ、こう答えました。
「うーん、一人に絞るのは難しいんですけどね……。本当に多くの監督と一緒に仕事をしてきたので。その中には自分の考え方とはかけ離れている方もいましたけど、完全に考えが合致する方もいなかった。でもね、やっぱり関わった指導者の方全員に感謝しているんですよ。その一人ひとりがいなかったら今の自分はないと思っているから。
それでも、中でも強く影響を受けた監督はそうだなぁ。岡田(武史)さん、(アルベルト・)ザッケローニさん、ギド(・ブッフバルト)さん、フェリックス・マガトさん、ニコ・コバチさんかな。それぞれにキャラクターがあって、指導のやり方があって、その様々な面に僕は感銘を受けている。だから、僕がもし指導者に就くとしたら、そんな皆さんの良いところをどんどん吸収して、それで自身の指導者像を築きたいなとは思っているんですけどね」
「あっ、オフトさん!」「マガトさんは厳しかった(笑)」
おお、やはり監督への興味もあるのですね。でも、彼は返す刀でこう続けました。
「だから、その指導者像のイメージがすでに自分の中にあるんですよ。でも、それを取り入れて実際に上手くいくか、いかないかは分からない。それがサッカーの面白さでもあるんですけどね」