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33歳ナーゲルスマン電撃就任… 6冠王者バイエルンのフリック監督はなぜ今季限りで辞めるのか? フロントと衝突の真相とは
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/04/28 17:03
33歳にしてバイエルン監督に就任するナーゲルスマン(左)と、強いバイエルンを作り上げたフリック監督
PSG戦前にレバンドフスキが痛恨の負傷
準々決勝の相手は昨季決勝でぶつかったフランスのパリSG。ブラジル代表ネイマール、フランス代表キリアン・ムバッペ、アルゼンチン代表アンヘル・ディマリアなど、スター選手を揃える優勝候補の一角だった。
そんな全精力をかけて挑む必要のある一戦を前に、よりによってクラブの生命線であるレバンドフスキが負傷離脱し、セカンドレグではゴレツカやドイツ代表CBニクラス・ズーレも負傷で出場できなかった。
結局ホームでのファーストレグを2-3で落としたバイエルンは、アウェーでのセカンドレグでは1-0で勝利したものの、アウェーゴール数で敗退となってしまった。
巡り合わせと言えば、そうかもしれない。運がなかったと言えば、そうかもしれない。しかし、パリSGとしてもファーストレグでキャプテンで守備の要のマルキーニョスが負傷交代していたという事実がある。自分たちだけが不運なわけではない。
1点が勝敗を分けるセカンドレグ終盤、疲れから動きが鈍っていたシュポ・モティンに代えて前線に投入されたのが、守備的選手のハビ・マルティネスだったというのは、台所事情が苦しいどころではないことを表していた。
パリSG戦でベンチ入りしたメンバーのほとんどはセカンドチームに所属する選手たちで、確かな戦力として数えられていたのはマルティネスのほか、若手のハマル・ムシアラしかいなかった。
それでも戦い方を変えようとしなかった
戦力的に厳しかったパリSG戦、それでもフリック監督は戦い方を変えようとしなかった。狙い通りの補強ができず、自分たちが思い描く戦いをするための戦力が揃っていないのであれば、シーズンを通してそれに応じた戦い方を見出していくという選択肢もあったはず。しかし、フリック監督は自分たちの戦いの軸を曲げようとはしなかった。
あくまでも相手陣内から精力的にプレスをかけ、優先的に試合を進め、相手を押し込み続けていこうとした。CLで準決勝進出を果たすことはできなかったし、ドイツカップでは2部キールに敗れたりもした。それでも走り続けた。
フリック監督は、その過程で何度もチームのメンタリティーを褒め称えていた。