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33歳ナーゲルスマン電撃就任… 6冠王者バイエルンのフリック監督はなぜ今季限りで辞めるのか? フロントと衝突の真相とは
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/04/28 17:03
33歳にしてバイエルン監督に就任するナーゲルスマン(左)と、強いバイエルンを作り上げたフリック監督
厳しい状況が続くなかでも愚痴を言わず、疲れを言い訳にせず、自分たちの力を引き出すために戦い続けていた。それは、バイエルンらしく戦い抜こうという決意からだろう。
健全経営を崩してまでの大型補強はできない
もちろん、首脳陣にも言い分はあるだろう。バイエルンのヘルベルト・ハイナー会長は「物事は常に表裏一体だ。この18カ月間チームが見せてくれた素晴らしいパフォーマンスと魅力的なサッカーを喜ばしく思っている。そして監督ができたら30人のトップスターを望んでいることも理解している。だが、忘れていけないのは我々にもコロナの影響があるということだ。1億5000万ユーロ以上のマイナス収支と向き合わなければならないのだ」とクラブ事情への理解を訴えていた。
健全経営を崩してまでの大型補強はできないし、するつもりもない。それはバイエルンの根幹を揺るがすことにもなる。
サリハミジッチSDにしても、これまで移籍ですべて失敗しているわけではない。カナダ代表アルフォンソ・デイビスはサリハミジッチSDが「絶対に獲得すべきだ!」と押し通し、1000万ユーロで獲得した。
そんな彼は左SBのレギュラーとして欠かせない戦力になった。加入初年度はケガで出場機会が少なかったフランス代表DFリュカ・エルナンデスは、来季R・マドリーへ移籍することになったオーストリア代表アラバの後継者と期待されている。
また来季への補強として、ライプツィヒから多くの欧州トップクラブとの競合を制してフランス代表CBウパメカノ獲得にも成功している。将来性のある若手選手獲得を精力的に行っているのも特徴的だろう。ドイツ代表となったムシアラだってその1人だ。
いつも同じ意見である必要はないし、仲良くある必要も
ハイナー会長が「いつも同じ意見である必要はないし、仲良くある必要もない。大事なことは共通の目的を持ち、取り組むことだ。そして、その目的とはバイエルンの成功に他ならない。そのためにプロフェッショナルな姿勢でともに働かなければならないのだ」と話していたことを思い出した。