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錦織圭に足りないのは「安定感」だけ? “クレー勝率9割超え”のナダルに「彼はトップ10に戻れるか?」と聞いてみたら…
text by
長谷部良太Ryota Hasebe
photograph byGetty Images
posted2021/04/23 17:03
過去2度も優勝経験があるバルセロナ・オープンの3回戦で、ラファエル・ナダルにフルセットで敗れた錦織圭
「少なくとも2セットは高いレベルでプレーする必要がある」
記者会見で、改善に必要なのは安定感かと問われると、錦織は次のように答えた。
「確実にそう。それだけだと思う。今日も(第2セット以降の)1セットと少ししかいいテニスができなかった。マイアミ(・オープン3回戦)でチチパスと対戦した時も、良かったのは1セットだけだった。少なくとも2セットは高いレベルでプレーする必要がある」
安定感の欠如は、今大会の1、2回戦でも少なからず見られた。
「2、3時間も試合をやらずにストレートで勝つべきだった。ラファとやる前に体に負担をかけてしまった」
高いレベルのプレーを維持するのは容易ではない。それでも、今の錦織が自分に求めているのは、その領域まで状態を戻すことにある。それこそが、目標にしている世界ランキング10位以内に返り咲くためのカギになる。
では、安定感に欠ける理由は何なのか。
「ちょっと自分でもよく分かっていないですね。集中力だったり、要因は何個かあるかと思うけど……」
「錦織は復活できるか?」の問いに、ナダルは……
気落ちする本人の言葉ばかり聞いていると忘れそうになるが、今大会は錦織にとってクレーコートの今季初戦だった。1回戦ではギド・ペラ、2回戦ではクリスティアン・ガリンと、ともに赤土が得意の南米選手を破って勝ち上がり、ナダルとも善戦を繰り広げた。3試合ともフルセットの激戦になったが、体力面の問題もなかった。けがに悩まされてきた錦織にとっては好材料だ。
筆者はナダルの記者会見で、錦織の印象を尋ねた。「彼がまたトップ10やトップ5に戻れると思うか」と。ナダルは次のように答えた。
「誰もがそうであるように、丈夫な体でいなければいけない。モチベーションを保って何年間か丈夫でいられれば、もちろん『イエス』だろう」
この日の試合を見れば、ナダルの言葉がリップサービスでないことは分かる。錦織は、完全復活に向け、着実に歩みを進めている。