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「無難なプレーでは…」ラプターズ渡邊雄太に変化が なぜ4月はダンク急増、3Pも積極的に打つようになったのか
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byUSA TODAY Sports/Reuters/AFLO
posted2021/04/13 11:00
オフェンス力を課題とされる渡邊。4月に入ってゴール下の制限区域内のシュートは14/16、3Pシュートを狙う姿勢も目立っている
「僕ぐらいの立場だと、やっぱりひとつのミスだとか、ひとつの悪いシュートで交代させられるというケースが今までもけっこうありましたし、それで交代させられると、もう、その試合は出番が回ってこないこともけっこうあった。
ただ、それを怖がって無難なプレー、無難なプレーをしていると、それはそれでマイナスになっちゃう。正直、すごく難しい状況ではあるんですけれど……。ただ、だからシュートに行くからには決めなきゃいけない立場ですし、アグレッシブに行くならシュートを決めるだけでなく、パスをしっかり出したりだとか、しっかりリングに向かってプレッシャーをかけてディフェンスを引き寄せ、チームメイトに繋げるだとか、そういうことが要求されてくる。
正直難しいところではあるんですけれど、それをやらないと次にはつながらないので。そこは今、自分がもうちょっとやっていかなきゃいけない部分かなというふうには思います」
何度も「難しい状況」「難しいところ」と繰り返したように、渡邊自身、何度も悩み、考えてきたことのようだった。「思い切りよく」「アグレッシブに」と言葉で言うのは簡単だが、その結果、出場時間が短くなったり、試合に出られないといったことを経験すると、自分が確実にできる仕事に専念したくなるものだ。渡邊のようにぎりぎりの立場の選手だと、なおさらだ。
アグレッシブに攻める姿勢
ナースHCは、かねてから渡邊のディフェンスやリバウンドを評価する一方で、オフェンス面ではシーズン序盤からさらなる成長を求めていた。開幕前に渡邊がロスター入りしたときにも「試合経験を積むことでオフェンスでも成長することを期待している」と言っていた。
といっても、エース級の得点を期待しているわけではない。ただ、チームとしてのオフェンスが機能するためには、最低限、相手のディフェンスから手を抜かれないだけのアグレッシブさや、決定力があるところは見せる必要があった。
3ポイントラインの外でパスを受けたときに、シュートを打つことに躊躇があることがわかると、立っていることが脅威にならなくなる。インサイドに攻め込んだときに、自分でシュートを打つ気がなさそうだったら、ディフェンスにとっては守りやすい相手になる。アグレッシブに攻める姿勢があるからこそ、そこから出すパスも生きてくる。
選手として成長するため、ひとつステップアップするためには、無難なプレーばかりしているわけにはいかない。成長したところを見せないと居場所がなくなるのが、NBAの世界なのだ。