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渡辺一平「何が間違っていたのか…」競泳日本選手権に見た“一発選考”の重圧 五輪をかけた勝負後の選手たち
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byKyodo News
posted2021/04/12 17:20
数々の実績を残しつつも東京五輪代表の切符を逃した渡辺一平。代表入りを果たした選手たちは彼らの思いとともに五輪へ臨む
「すごい辛いこともあります。でも幸せだなって思うこともたくさんあって、水泳があるからこそ、自分がいるんじゃないかと感じるんです」
日本選手権での姿に、その言葉の意味をあらためて思った。
松元克央は日本新記録で堂々の代表入り
期待が集まる中、それに応えて代表を決めたのが松元克央。2019年の世界選手権の200m自由形で男女を通じて日本初の表彰台となる銀メダルを獲得、脚光を浴びた。今大会の決勝では日本選手初の44秒台となる1分44秒65の日本新記録で優勝し、堂々、代表を決めた。
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「やってきたことを信じて泳ぐことができました」
言葉にすれば簡単に済むけれど実行するのが容易ではないことを実戦でできたのは積み上げた地力の表れだ。
個人メドレーの大橋悠依は最初の種目400mで優勝してまず代表をつかむと、2種目めの200mは2位で代表となった。
この数年、国際大会でメダルを獲得するなど女子の主軸たる活躍を見せてきたが、オリンピックは25歳にして初めてとなる。リオデジャネイロ五輪の前年の日本選手権では故障や体調面の影響で40位に沈んだこともある。やめようと思ったこともあるが、努力を重ね、現在の位置にたどり着いた。
「(五輪代表に)ずっとなりたいと思っていたのでうれしいです」
と語っているが、午前中に行なわれた400mの予選では、本大会が午前決勝であることを想定し、通常の予選以上に速く泳いだ。大舞台も視野に入れての選考会であった。
「何が間違っていたのか、どうすればよかったのか」
オリンピックの切符をつかめなかった選手もいる。200m平泳ぎで数々の実績を残してきた渡辺一平は、代表入りはむろんのこと、世界新記録を目指して臨んでいた。いざ大会でも手ごたえを感じつつも3位に終わり、リオに続く代表とはなれなかった。
「何が間違っていたのか、どうすればよかったのか」
これが重圧ののしかかる一発選考の怖さかもしれない。代表は逃したが、リオ以降の世界新記録達成、世界選手権でのメダルなど積み重ねてきた日々が消えることはない。