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プロ野球スカウト4人に直撃取材「高校生投手、畔柳(中京大中京)、達(天理)、小園(市立和歌山)でドラ1候補は?」【甲子園】
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/04/05 18:25
中京大中京・畔柳亨丞。準決勝の明豊戦で4回途中から2番手で登板も、体調不良で31球で降板
(4)投手出身スカウト「150キロ約束されているのは畔柳だけ?」
1.畔柳亨丞(中京大中京)だけ
「いや、2番も3番もないですね、畔柳だけです。畔柳も小園も達も、当然1位候補だと思います。でもドラフト1位のピッチャーっていうのは、ローテーションで投げてもらうか、後ろの1イニングを任されるか、どっちにしても、一軍のバリバリを期待されるわけですよ。今のプロでそういうピッチャーって、普通に150キロ投げてますよね。この3人の中で、“150キロ”約束されてるのって、畔柳だけだと思いません?」
ある投手出身スカウトは一気に語り抜けた。
「今は150キロで当たり前だけど、彼らが一軍で活躍してそうな5年先あたりには、もう“160キロ”の時代になってるかもしれない。スピードは日進月歩で進化してるし、実際に時々は160キロ出てますよね。“高校生”を考える時は、5年後、6年後のプロ野球がどうなってるかを前提にしないと人選を間違えるんじゃないと思うんですよ、私は。今の野球環境で考えたら、すばらしいピッチャーに思えても、その頃になったら“時代遅れ”だったなんてこともあるんじゃないかなぁ」
すごく説得力を感じる「見解」だった。
その後、準決勝の明豊高戦のリリーフで、右腕に違和感を発症。そんな体調でも、130キロ後半の速球とスライダーで打者7人から5三振を奪い、切り抜けられるピッチングセンスも証明してみせた。
今の素晴らしさが、数年後の「野球」に果たしてフィットしているのかどうか。
かつて、広島カープの礎を築いた木庭教スカウト部長が、こんなことをおっしゃっていた。
「スカウトは想像力の勝負」
始まったばかりの「2021年ドラフト戦線」。センバツ組以外の高校生がいない、いないと嘆く声が支配的だが、この先6カ月、いやいや、そのまんまでは決して終わるわけはない。