（3）“あまのじゃく”スカウト「ボクは石田でいきます」

「この3人じゃなくてもいいですか？」

　プロ野球スカウトも100人以上いれば、中には、こういう人もいる。

「ボクだったら、こうですね……」

　とこのスカウトが並べてくれた結果は、こんなふうになった。

　1.石田隼都（東海大相模）
　2.木村大成（北海）
　3.本田峻也（東海大菅生）

「達、小園、畔柳と“右”ばっかりなので、ボクは“左”でいきます」

　優勝投手・石田隼都が筆頭に挙がった。

「ボクの知っている石田は、ちぎっては投げ、またちぎっては投げの、信じられない高速テンポで投げる左腕。去年の夏の交流試合も秋の大会も。真っすぐは140キロ前後をコンスタントに出せて、スライダーやチェンジアップのコントロールもそんなにブレない。すごいヤツだなぁと思いましたよ。あんなテンポで投げたら、普通は100球なんて絶対持たない。それをあの猛暑の甲子園でも、平気な顔でやってましたからね」

　その「石田スタイル」が、このセンバツでは一変していたという。

「普通のインターバルをとりながら投げてるんで、ビックリした。しかも、最初からこの普通のテンポで投げてるんだという雰囲気で。同じ球種を、以前より増した球威で投げて、すごい“数字”出してるわけですよ。こんな春先にこの大舞台で」

　準決勝までの石田隼都。26イニング12安打、なんと43奪三振、よもやの四死球1の無失点。まさに無敵の快進撃だった。

「猛烈に速いテンポでも投げられて、普通のインターバルでも投げられる。つまり、2つの“スタイル”を持っている。ダブルスタンダードってわけですよ。左腕でこんなピッチャー、ボクは知らない。将来、この2つのスタイルを使い分けるのかどうかは別にしても、立派な“投の二刀流”じゃないですか」

木村のスライダーは高校生のボールじゃない

　木村大成（北海）、本田峻也（東海大菅生）も十分プロの素材だという。

「畔柳、小園、達のインパクトが強くて、相対的に目立たなかっただけで、絶対値は間違いなく大きい。木村の投げるスライダーなんて、高校生が投げるボールじゃないですよ。クロスファイアーの角度もいいし、北海道であれだけの左腕って、過去に記憶ないですね」

　本田峻也は、大会直前に左肩の不調を発症したのが惜しかった。

「そうらしいですね。でもボク、去年のいい時、見てますから。評価は変わりませんよ。みんな、インステップのことばかり言うけど、あんなにリリースが見えない左ピッチャーいないですよ。あのインステップだって、そんなに負担になってないはずですよ」

　右足の踏み出しは一塁側ベンチ方向でも、つま先は、ちゃんとホームの方向向いてステップしてますもんね…そう振ったら、スカウト氏、エヘヘ…と笑って、

「あの角度から、スライダー、チェンジアップ、あと、スプリットかな…あいつは使えますよ」、「球筋が、高梨（雄平・巨人）ですよ…」と言い添えてくださった。

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