競馬PRESSBACK NUMBER
ダノンスマッシュ&レッドルゼル、2頭の善戦に安田隆行師が涙 「ムーアが褒めてくれた。誇りにしたい」
text by
平松さとしSatoshi Hiramatsu
photograph bySatoshi Hiramatsu
posted2021/04/02 17:01
高松宮記念を制し、国内GI初制覇を成し遂げた安田隆行厩舎のダノンスマッシュ
素晴らしい追い切り、しかし思わぬ不安要素が
今回の高松宮記念は先述した通り重賞8勝目。これまではオーシャンS(GIII)や京王杯スプリングC(GII)など、いわゆる前哨戦を勝つものの、本番では惜敗するシーンが多かった。それも考慮されたのか、今回は昨年の香港以来、ぶっつけでの出走で戴冠した。
「レース間隔を詰めるとゲートで悪さをするなど、集中力を欠く事は分かっていました。だから今回は昨年の香港を勝った時点で『ぶっつけで行こう』と決めました。アクシデントで休み明けになったわけではないので、良い具合に仕上げられたと思います」
実際、最終追い切りの動きも指揮官の目には「素晴らしく映った」と言う。
だが当日、眉間に皺を寄せる事態に見舞われた。その日は午前中に阪神競馬場に出走馬を送り込んだ安田調教師。そのレースを見届けた後、高松宮記念の舞台となる中京競馬場へ新幹線で移動。その窓を叩く雨が時間を追うごとに強くなっていった。
「途中からはバケツをひっくり返したような強い雨になりました。スマッシュはスピードを活かしたいタイプなので良馬場の方が良い。正直、これだけ降ると『厳しいかなぁ……』と感じました」
「とくに人気面は気にはなりませんでした」
7レースまで稍重発表だった芝コースは、9レースから重馬場となり、メインの高松宮記念を迎えた。
1番人気はレシステンシア。ダノンスマッシュは2番人気で3番人気がインディチャンプ。GI馬が上位人気を占めていた。
「2番人気である事は分かっていました。ただ、とくに人気面は気にはなりませんでした」
鞍上を任せたのは愛弟子の川田将雅騎手。調教助手と入念に打ち合わせをしている姿を安田調教師は目にした。
「彼自身も道悪を頭に入れていたのが分かりました。だから私からは余計な事は言わず『お願いします』とだけ言って送り出しました」
外目の14番枠からのスタートだった。当時の心境を次のように語る。
「スタートは決めてほしいと思っていたら好発を切ってくれました。この時点で『よしよし』と思って見ていました」