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守備力が高すぎるからこそ“崩れた鉄壁” 「甲子園で勝ち上がるためには…」広島新庄が味わったミスという魔物 

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間淳

間淳Jun Aida

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posted2021/03/28 06:01

守備力が高すぎるからこそ“崩れた鉄壁” 「甲子園で勝ち上がるためには…」広島新庄が味わったミスという魔物<Number Web> photograph by KYODO

智弁学園に敗れた広島新庄ナイン。夏、再び甲子園の舞台に戻ってこれるか

 2回には、1アウト二塁とピンチの場面で、智弁学園の二塁ランナー・山下陽輔をけん制でアウトにしている。山下の第1リードを見た瀬尾が、投手の花田侑樹にけん制球のサインを出したものだったことから、センスの高さをうかがわせる。

智弁相手に描いた2つのゲームプランとは

 接戦に抜群の強さを見せる広島新庄だけに、宇多村聡監督が描く智弁学園戦のゲームプランは2つあった。

「3点差以内で試合を運ぶ」

「投手の花田を5回まで投げさせて、6回から秋山にスイッチする」

 だが、3回に"限度"の3失点に到達。指揮官は「このままでは大量点につながりかねない」と判断し、4回に秋山を前倒しで投入せざるを得なくなった。

 想定よりも早くマウンドに立った秋山は4回、智弁学園の先頭・植垣洸に、いきなり二塁打を許す。そこから、犠飛で1点を失った。僅差の展開に持ち込みたい広島新庄にとっては、致命的な1点となった。

 それでも、4点を追う8回には3本の単打で1点を返した。その打点を挙げたのが失策をした瀬尾だった。

「ストレートが来るだろうなと予想していて、その球をとらえることができた。チャンスで1本出てよかった」

 前の打席まで球威に押されていたストレートを狙ってセンターに弾き返した。チームが記録した6安打は、いずれも単打でセンターから逆方向である。バットを短く持ってコンパクトにスイングする打撃はチームに浸透していた。

堅い守備で守り切るため、さらに「鍛える」

 確実に1点を取り、堅い守備で守り切るスタイルは確立され、甲子園でも通用することを証明した。ただ、甲子園で上に進むためには、まだ足りないことがある。宇多村監督は夏に向けて、こう話した。

「甲子園でもっと勝ち上がるためには、投手を中心にしっかり守っていかないと勝ちにつながらないと改めて思った。失策をした瀬尾に限らず全員を鍛えて、甲子園に戻ってきたい。点を与えないことが私たちの野球」

 鉄壁の守備を象徴する存在でもあり、ミスの怖さを知った瀬尾の思いも同じだ。

「自分の実力不足で送球が上にいってしまった。見つかった課題を直していけるように頑張っていく。守備をもっとしっかり磨いて投手を助けられるようにしたい」

 わずかなほころびが勝敗を左右する怖さを知った広島新庄。ただこれは夏の甲子園に向けて教訓を得たとも言えるだろう。この経験を生かして大舞台に戻ってくれば――甲子園が緊張感に包まれるような息詰まる接戦で再び真価を発揮し、そしてチームを勝利に導く瀬尾の守備が灼熱の聖地を熱くするかもしれない。

記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。

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