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全国とは無縁、松葉杖で入団会見…代表デビュー&初ゴールDF山根視来の“ギリギリ”なサッカー人生【曺監督からのメッセージ】
posted2021/03/28 11:04
text by
林遼平Ryohei Hayashi
photograph by
7044/AFLO
Jリーグでは名の知れた存在だが、日本代表ではまだまだ無名。
そんな男が一瞬にしてその名を轟かせた。
3月25日、日産スタジアムで行われたサッカー日本代表の韓国戦。伝統の日韓戦において、新参者がゴールを奪う。前半17分、右SBのポジションからスルスルと前線に上がっていき、ペナルティエリア内でボールを受けると右足を一閃。強烈なシュートは、バーに当たりながらゴールに吸い込まれた。
右拳を力強く下に振り下ろし渾身のガッツポーズ。今回の代表活動で初招集となった山根視来は、代表デビュー戦で初ゴールの離れ業をやってのけた。
骨折で出遅れたプロ1年目
とうとうここまで来たか。そう思わざるを得なかった。
振り返ること5年前。2016年の湘南ベルマーレ新体制発表会見でプロとしての歩みをスタートさせた男は、重要な初日に松葉杖姿で登壇していた。
前年に桐蔭横浜大学の選手として天皇杯で湘南と対戦し、そこでゴールを奪ったことで練習参加のチャンスを得ると、トレーニングからキレのあるプレーを披露してプロ内定を獲得。「ギリギリ」の加入だった山根は、キャンプからどんどんアピールしていく必要があった。
しかし、シーズン前の自主トレーニング中に左足の第5中足骨を骨折。始動前に怪我を負ったことで「さすがに『契約は無しで』と言われると思った」と苦笑いを浮かべるほど、当時の状況は最悪だった。
それからというもの、山根は紆余曲折の日々を送ってきた。
特にプロ1年目は怪我の影響もあってリーグ戦の出場がゼロ。復帰した後に天皇杯で初めてピッチに立ったが、そこで散々なプレーを披露するなど全く成果を得られないまま1年を過ごした。
ただ、昔から山根はどんな時でも「絶対に折れない男」だった。