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【神対応が話題】飯伏、棚橋との“夢の3ショット”でオカダが感じた「地獄とプライド」 地震直後の新日に思ったこと
posted2021/03/25 17:02
text by
原壮史Masashi Hara
photograph by
Masashi Hara
棚橋弘至を場外に投げ飛ばし、高橋裕二郎とKENTAに襲わせて高みの見物をしていたジェイ・ホワイトだったが、突然前後左右を気にしはじめた。会場中のスマートフォンから不快な音が鳴りだしたからだ。
すぐに地鳴りの音と共に揺れがやってきた。
3月20日18時9分、宮城県沖でマグニチュード6.9、最大震度5強の地震が発生。新日本プロレスが試合を開催していたゼビオアリーナ仙台がある仙台市太白区も震度4を計測し、試合は中断された。
この日プロレスでは初めて使用されたゼビオアリーナ仙台という会場が東日本大震災後に建てられたものだったこと、そして地震がこの試合のタイミングで起こったことは不幸中の幸いだった。約25分後、安全確認が完了し、試合は無事再開されることになったが、この間の対応が素晴らしかったのだ。
飯伏幸太の冷静な行動は観客の心を動かした
真っ先に行動を起こしたのは飯伏幸太だった。
揺れが襲ってくるとすぐに観客席に向かって「大丈夫大丈夫。大丈夫だよ」と静かに言いながら、落ち着いて、というジェスチャーを繰り返した。
キャンプ場プロレスで対戦相手の顔に花火を発射したり、武道館のバルコニーからムーンサルトでダイブしたり、と破茶滅茶なエピソードには事欠かない飯伏だが、誰よりも早く、誰よりも冷静に観客を落ち着かせようとした。
自身の戦う目的を「プロレスを広めること」と公言し「逃げない、負けない、諦めない。そして絶対裏切らない」と宣言している飯伏だが、いざという時にそれがそのまま嘘偽りなく行動に表れた。2冠統一で賛否両論を巻き起こしてきた飯伏だが、少なくともこの日会場にいた観客は、飯伏について行くことを心に決めたに違いない。王者として、そして団体を背負う存在として、新日本プロレスのファンが自信を持って世界に自慢できる選手であるということを感じさせられる姿だった。