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【神対応が話題】飯伏、棚橋との“夢の3ショット”でオカダが感じた「地獄とプライド」 地震直後の新日に思ったこと
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/03/25 17:02
飯伏幸太(左)と棚橋弘至(中央)との夢の3ショットを実現させたオカダ・カズチカ。プロレスラーとしてのプライドを見せた
嫌な気持ちのままで帰せないプライド
それは、中止の可能性もまだ残っている中、この3人が並んでポーズをとるということ自体がこの日のプロレス観戦を嫌な思い出にさせない力を持っていた、ということだ。
不安な気持ちのままで終わってしまえば、これを機に観戦から身を引いてしまう人がいるかもしれない。それに、人生初の観戦だった人もいるかもしれない。1年に1度、もしかしたら人生で1度しかない観戦のチャンスだった人だっているかもしれない。そういう人を嫌な気持ちのままで帰してしまうのは、プロレス界を引っ張ってきた棚橋、オカダ、そして現在の先頭を担っている飯伏にとってあってはならないことだった。オカダが手拍子をしてくる飯伏を不快に思いながらも列に加わることにしたのは、ファンを嫌な気分で帰してしまうことになる、というのはプロレスラーとしてのプライドが許さなかったからだろう。
10年前のことを思い出す人も少なくはなかった仙台で
実現したこの3ショットは、地震で中断したこの日、というのを一気に良い思い出に変えてくれるものだった。
棚橋は「即刻中止でよかったかもしれない」と葛藤があったことも明かしたが、この中断時間は観客にとってかけがえのないものになった。会場に足を運んだ1230人にとって、この日のプロレス観戦は、良いものを見ることができた、という大切な思い出になったのだ。
緊急地震速報の忌々しい音と大きな揺れ。現在の状況を不安に思うだけでなく、ここは仙台。10年前のことを否応なく思い出す人も少なくはなかった。そんな中で観客と一体となり、不安を打ち消し希望となってみせた。しかも、今日来てよかった、と思わせるほどに。
これこそプロレスの力であり、プロレスラーの凄さだ。