松本が抱える葛藤と、無限ループ

　実力の世界。年齢に関係なく、力で上回る選手がコートに立つのは道理だ。それでもチームや若手のことを考えると、葛藤はあると松本は言う。

「若い選手に頑張ってもらいたいという思いも、ものすごくあるんですけど、自分も負けたくない。試合に出たい。でもスタメンのミドルは2人で、そのうち1つの枠で40歳の選手が出ていたら、若手が試合に出ながらうまくなっていくのが難しい。30代前半ぐらいまではそんなこと考えませんでしたけど、今の年齢になると、正直葛藤はあります。

　だから、余計に頑張らなきゃと思うんですけどね。試合に出てある程度のパフォーマンスしかできないんだったら、ダメでも若い選手使えって言われる。それはやっぱり悔しいので」

　試合に出るからには、誰もが納得するパフォーマンスをと、自分にプレッシャーをかけながらコートに立ち続けている。

「パフォーマンスが目に見えて下がってきたら、身を引いたほうがいいと思っています」と言う。

　しかし40歳にしてパフォーマンスが上がったと実感している松本に限界は見えない。何より、「悔しい」「負けたくない」と心に火が灯っている限り、コートに立ちつづけるだろう。バレーへの探究心は尽きるどころか、まだ湧き出して止まらない。

　松本選手にとってバレーボールとは？と尋ねた。

「バレーボールは……正解のない正解を探すこと、ですかね」

　これが正解だ、と思っても、そうじゃなかったと思い知らされる瞬間が来て、また正解を探す。

「ずっとその繰り返し。無限ループです。そこにはまって、抜けられない。そこに魅力を感じてしまっている、特に今は。取りつかれているんでしょうね、ハハハ」

　40歳のレジェンドが、少年のように屈託なく笑った。