同世代のライバルたちは監督に

　松本は、普段は言葉で積極的に発信するタイプではないが、チームがバラバラになりそうな危機には、強力なリーダーシップを発揮して選手たちをまとめる堺の精神的支柱だ。

　松本と長年対角を組んできた堺の出耒田敬（できた・たかし）は言う。

「松さんはチームのことをすごく考えてくれているし、よく見ている。松さんの一言は、心にぐっとくるものがあって、いざという時の頼り甲斐がすごくあります。僕も30歳になりますけど、松さんとまだまだバレーがしたい。松さんが現役でいる限り、自分も先に辞めることはできないなと思います（笑）」

　松本が現役でプレーし続けるモチベーションの一つには“同級生”の存在もある。

「同級生が、もう監督をやっていたりするので、そのチームに負けたくないという気持ちは、原動力としては大きいです」

　サントリーの山村監督、ジェイテクトSTINGSの高橋慎治監督は同級生だ。

　北京五輪に共に出場した山村は、40歳で400試合出場を果たした松本についてこう語った。

「もう、ただただすごいな、というのが率直な感想です。できる限り続けてほしい」

　それは本心だ。だが山村はこう続けた。

日本代表でも共にプレーした山村（左）。現在はサントリーサンバーズで監督を務めている　©Jun Tsukida/AFLO SPORT

「ただ逆に、『早く抜いてあげて』って思います。若い選手たちに。いい背中を、練習から見せてもらってるんだから。追いやってあげないと、松本もいつまでも引退できない。松本が上手で、すごすぎるからなんですけどね。いつまでもやってほしい気持ちもあるし、早く抜いてあげてって気持ちも、両方あります。

　誤解を恐れずに言えば、僕らが一緒に（代表で）やっていた頃のほうが、今より断然すごかった。それでも、巧さをキープできているのはすごいし、パフォーマンスを維持しようと努力していることも知っているので、尊敬できる。人柄もすごくいい選手で、松本のこと大好きなんで、だからこそ、そう思うんです」

　互いの全盛期に切磋琢磨した戦友だからこその思いがあふれた。

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