バレーボールPRESSBACK NUMBER
東山高の春高バレー棄権から2カ月…“特別な試合”を用意したV1サントリーの願い「かわいそうだから」だけではない
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/22 17:01
元日本代表で、現在はサントリーサンバーズのアンバサダーを務める荻野正二氏を中心に記念撮影を行った東山と市尼崎の選手たち
翌日の2戦目は中止に。それでも
「また明日」
この当たり前の言葉が、決して当たり前ではない現実をこれ以上ないほど思い知った1年はなかっただろう。
最後の最後、本来は3年生たちにとってラストマッチとなるはずだった翌21日の2戦目は大会関係者に発熱者が出たため、試合直前に中止が発表された。
もしも普通に、2日目も開催されたなら「明日はもっといいプレーができる」と意気込んでいた東山の選手たちはどんなコンビネーションを見せたのだろう。エキシビジョンマッチとはいえ、負けて終わりたくないと市尼崎の選手も、初日以上のパフォーマンスを発揮して、もっともつれて痺れるような試合が見られたかもしれない。
楽しそうに笑顔でプレーする姿を見た分余計に、叶わぬ現実を嘆きたくもなるが、それでも彼らは前を向く。なぜなら、バレー人生はこれで終わりではないからだ。
インターハイ、国体が続けて中止になり、ようやく開催された春高も途中棄権。想像を絶するような困難を強いられても、彼らは負けなかった。
ならば“もしも”は後ろ向きでなく、前向きに。初戦を終えた後の荒木の言葉はその象徴だ。
「春高は本当に悔しかったし、なかなか切り替えられなかった。でもこの試合が、次のステージに向かっていくための第一歩。全員で、笑って先に進んでいきたいです」
嘆くばかりでなく前へ。寒さに耐えた桜が満開の日を迎えるように、彼らの未来も強く逞しい幹の上で、いつか美しい大輪の花を咲かせますように。心から、そう願っている。