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直前の“棄権”通告に泣き崩れ…春高バレー前王者・東山に何が起きていたか「これで終わりなんか、と思うとね」

posted2021/02/05 06:00

 
直前の“棄権”通告に泣き崩れ…春高バレー前王者・東山に何が起きていたか「これで終わりなんか、と思うとね」<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

連覇を目指した春高バレーで棄権となり、涙する東山高校の選手たち。あれから1カ月、新チームも始動するなど、それぞれが一歩を踏み出していた

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田中夕子

田中夕子Yuko Tanaka

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Sankei Shimbun

 試合開始を告げる笛の音が響き、準々決勝進出をかけた3回戦がコート3面同時に始まった。

 得点のたびにコートから歓声が飛び交うのと時を同じくして、体育館の隅で王者・東山高校の選手たちは泣き崩れていた。

「棄権」と告げられるたった15分前までは、連覇を目指し、自分たちも同じようにユニフォームを着てコートで練習をしていたのに、と声にならない声で。

 あれから3週間近くが経った1月25日。ようやくスタートした新チームの練習に、笑顔で付き合う卒業を控えた3年生たちの姿。例年ならば、ごく普通の何気ない風景だが、変わらぬ笑顔を見れば見るほど、込み上げるものがある。東山の豊田充浩監督は、寂しそうに言った。

「春高までいろんな我慢をして、段階的に成長してきましたから。そういう経緯の1つ1つ、思い出。これで終わりなんか、と思うとね。ふと、涙が出そうになるんですよ」

 電話越しの声に、悔しさを滲ませた。

監督の不安を消し去るバレー

 初戦の入りは完璧だった。

 初制覇を遂げた昨年、高橋藍という大エースがいたチームとは異なり、今季は大エースと言える選手はいない。だが主将で攻守の要でもある吉村颯太やアウトサイドヒッターの楠本岳を軸に、常に全員が攻撃へ入り、セッターの荒木琢真がバランスよくトスを散らす。前日、1回戦を勝利した東海大相模に対し、東山は11月14日の京都府決勝以後、練習試合すら一切行っていない。久しぶりの試合で硬さが出るかもしれない、と豊田監督は考慮していたが、そんな不安はいい意味で裏切られた。

 ミドルの速攻と同じテンポで繰り出すサイドからの攻撃やバックアタック。惜しむことなく、練習の成果を披露する選手たちの姿に「初戦(2回戦)でここまで出すんか」と驚きながらも、この場を待ち望んでいた選手たちの喜びを代弁するかのごとく、「楽しそうな選手の姿が見られて嬉しかった」と豊田監督はミックスゾーンで目を細めた。

 事態が急転したのは、その日の夜だった。

【次ページ】 「東山はコートから引き上げるように」

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