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キング・ペレの息子が麻薬売買組織にハメられた? 代理人も頭を悩ます有名選手の“転落人生”、その要因とは
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byAP/AFLO
posted2021/03/16 17:02
1977年頃のペレと息子のエジーニョ
「僕がコリンチャンスに在籍していた頃(1993~94年)、彼はサントスで活躍していた。現役引退後、僕の代理人業のパートナーのデメトリオスがエジーニョの親友で、彼に紹介してもらったんだ」
“ペレの息子”ということで悪い奴らに利用されたのでは
デメトリオスは、1991年から2007年までCFとしてサントス、フルミネンセ、ボアビスタ(ポルトガル)などで活躍。2007年に引退し、以後は主としてブラジル人やポルトガル人の選手、監督を日本、中国、サウジアラビアなどのクラブへ紹介している。
――エジーニョが麻薬関係のトラブルを起こした経緯について、何かご存知ですか?
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「具体的なことは、何も知らない。彼はとても人柄がいい。ペレの息子ということで多くの人が集まってくるから、その中の悪い奴らに利用されたんじゃないかと思っている」
――昨年後半、日本でもブラジル人を含むアルビレックス新潟、ベガルタ仙台、ガンバ大阪の選手が飲酒運転、女性への暴力や脅迫などのトラブルを起こして解雇されました。しかし、ブラジルでの問題は質、量ともに日本よりはるかに深刻です。両国のフットボール界の内情を良く知る橋本さんは、なぜだと思いますか?
「最大の違いは、学校と家庭による教育と躾だと思う。たとえば、私は日本で小中学校年代の子供たちを指導することがあるが、皆、練習の前に必ず『こんにちは! よろしくお願いします!』と大声で挨拶するし、練習が終わったら『ありがとうございました!』と頭を下げる。とても礼儀正しい」
――その点、ブラジルでは状況が異なるのでしょうか?
「そう言わざるをえないね。ブラジルでは、フットボールがうまい奴が偉くて、クラブからも仲間からも丁重に扱ってもらえる。練習への遅刻などの規律上の問題を起こしても、選手の格によって処分が異なることがある。年下が年上に敬意を示すこともなく、若くてもうまい選手が威張っていて、年上の選手に生意気な口をきいたりする」
――これは、フットボール選手に限らず両国の社会や文化の違いでもありそうですね。
「そうだろうね。また、選手育成システムの違いのせいでもある。日本では、学校の部活動なら監督、コーチの多くが教育者であり、教育の一環として指導する。一方、ブラジルには部活動がなく、クラブが選手を育てる。指導者も教師ではないから、ただ単にスポーツを教えるだけで、教育の一環という意識はほとんどない。この違いは大きい」
――なるほど。であれば、ブラジルではこの問題にどう取り組むべきだと考えますか?
「フットボールの世界に限らず、社会全体で子供への教育と躾をもっと重視する必要があると思う。ブラジルも色々な面で進歩しているが、文化的な面がまだ物足りない。ブラジル人選手が豊かな教養を身に付けたら、トラブルや犯罪は激減するはず。競技面でもさらに向上し、ブラジル代表はヨーロッパの強豪国代表にも楽に勝てるのではないかと思っている」
代理人業のパートナーであるブラジル人の見解は……
橋本氏から、代理人業のパートナーでエジーニョの親友というデメトリオス氏を紹介してもらった。
現在49歳で、50歳のエジーニョ、52歳の橋本氏とほぼ同世代。ブラジル人らしく、非常に気さくな人物だった。