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なぜ「受験塾の経営者」が“突然”サッカー代理人に? “異色の代理人”富永雄輔(38歳)とは何者か<ソン・フンミン&吉田麻也も所属>
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byGetty Images
posted2021/03/17 17:00
ソン・フンミン(トッテナム)も代理人事務所『Base』に所属している
「クラシコの日は部屋が揺れるくらい近かった。物心ついたらシーズンチケットを買い、ベルナベウに通っていました。ブトラゲーニョとウーゴ・サンチェスの全盛期。レアルに強い思いがあり、塾を始めてからもいつかサッカーに関わりたいと思っていました」
チャンスは思わぬ形で訪れる。知人からの依頼で、FC東京や大宮アルディージャの選手数人に英語やスペイン語を教える機会を得た。
「選手たちは忙しく、僕もそれほどノウハウがなかったため、長続きしませんでした。ただ、選手と接してサッカー界の入り口に立つことができ、代理人への興味が強くなりました」
折しも代理人が試験による認定制度から登録制に変わった頃だ。富永は副業として代理人業を始めた。
「数人と契約させて頂きました。とはいえ、語学力を生かしてスペインの関係者とやりとりできても、業務提携まではいかない。代理人業界の参入障壁はかなり高い。どうやったら壁を越えられるかを考えているときに、『Base』から連絡があったんです」
「22歳を越えると若手とは見なしません」
2018年、テスト期間を経て、富永は『Base』の一員になった。
「ちょうど『Base』の仲介によってフェルナンド・トーレスがサガン鳥栖に入るときで、僕はまだ完全な正式メンバーでなかったので発表の1時間前に教えてもらった。彼らは中と外の線引きがものすごくはっきりしている。でも一度内部に入ったらすごく大切にしてくれる。会社のHPに全メンバーの顔写真とプロフィールが掲載されています」
ロンドン本社に日本人の社員が1人いるが、日本在住の代理人は富永だけ。与えられたミッションは「5大リーグで活躍できる日本人を見つけること」だ。
「5大リーグで活躍できるポテンシャルの選手を見つけ、契約するのが役割です。『年齢は若いにこしたことはない』と言われており、22歳を越えると若手とは見なしません」
若い選手とは「パズドラの話をしたり……」
富永は『Base』の看板を背負い、有望な若手へアプローチを開始。契約第1号は当時鳥栖に所属していた田川亨介(現FC東京)だった。