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指導者にならないJリーガーは何をする? 徳永悠平が麦わら帽と長靴姿でスイートコーンを栽培するワケ

posted2021/03/17 11:01

 
指導者にならないJリーガーは何をする? 徳永悠平が麦わら帽と長靴姿でスイートコーンを栽培するワケ<Number Web> photograph by Yuhei Tokunaga

昨季限りで現役引退した徳永悠平。現在は家業を手伝う傍ら、土日は「TOKUファーム」で農業にチャレンジしている

text by

石井宏美

石井宏美Hiromi Ishii

PROFILE

photograph by

Yuhei Tokunaga

 麦わら帽子にジャージ。手には軍手、足元はたっぷりと土が付いた長靴。かつてはいかつい風貌で寡黙というイメージだったが、すっかり柔らかい印象になっていた。数カ月前までは想像できなかった姿だ。

 徳永悠平が農業を始めていた。

「まったくのゼロから始めているので、すべてが新鮮だし、本当に楽しいですね」

 第二の人生を歩み始めたその表情は、現役時代と同じくらいいきいきしているように見える。自身のインスタグラムでは畑やビニールハウスを視察する姿が収まった写真とともに「色々とチャレンジしていきます!」と決意表明。

 でも、Youはなぜ農業を?

サッカーのことを考えている余裕がない(笑)

 日本代表にも名を連ねた右サイドバックは、18年間のプロ生活をまっとうし、やりきったという達成感があるのだろう。引退して始めて迎えるJリーグ開幕も、「正直あまり意識していない」と淡々と語る。

「自分の環境が変わったので、そこに順応することに精一杯でサッカーのことを考えている余裕がないという感じですね。もう、覚えることが多すぎて(笑)、いくら時間があっても足りない。毎日時間に追われているという感じです」

 指導者というセカンドキャリアは選択肢にはなかったのかたずねると、「まったく考えていなかった」と即答。選手時代、日常的に指導者と接してきたなかで、自分の性格的に難しいだろうと悟ったのだという。なかでもプロのカテゴリで指導するのは自分らしくない、とも。

経営者の父の背中を見て

 引退後の今年1月に父が経営するコンクリート二次製品などを製造販売する会社に入社した。幼い頃、プロサッカー選手になる夢を抱く一方で、徳永さんは父親のように経営者として働く姿に憧れていたという。今は、「いずれは自分も会社を経営したい」という目標を視野に入れて、下積み。日々、業務内容の説明を受けたり、パソコンを使って書類を作成するなど新たな分野へのチャレンジに励んでいる。

「これまで数字を意識して勉強したこともなかったですし、自社で扱っている製品、他社の製品なども把握しないといけない。営業にも行くのでどうやって売り込むのかも勉強していかないといけなくて、覚えることが多いんです。慣れるまでに一体何年かかるんだろうという感じです。今はいっぱいいっぱいですよ(笑)」

 まだ、その状況を楽しむというところまでは到達できていない。ただ、仕事を覚え、慣れ、軌道に乗れば楽しめるんだろうなという感覚は掴めているという。

 サッカー選手時代も土台となる部分をしっかりと築きながらレベルアップしてきた。その経験があるからこそ、新たな挑戦を始めたこの時期が重要だと考えている。さらに故郷・長崎に戻ったことで、新たな意欲が芽生え始めた。それが農業だった。

【次ページ】 「島原の名産をアピールしたい」

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