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長谷部誠「次が最後の1年」と言い続けて…37歳の今も現役&契約延長 もはや“悟りの境地”レベル
text by
中野吉之伴Kichinosuke Nakano
photograph byGetty Images
posted2021/03/13 17:02
長谷部誠のプレーは、日々円熟している印象だ
現役続行を望んでも引退を決断する選手がいる中で
モナコのティエリー・アンリ監督が獲得を熱望したことで移籍したが、当のアンリ監督が1カ月後に解任となる。新監督は別の選手を重用した。2020年1月に契約解除となってしまった。
「アンリは僕を信頼してくれていたが、彼が解任されて、すべてが変わってしまった。新監督が来たとき僕は出場停止だったんだけど、その間にチームは好調で……」
ナウド本人は現役続行を望んでいたが、結果として望むようなオファーが届かなかったことで、引退を決断することになった。
この例からもわかるように、当時リーグMVP級の活躍をしていたナウドでも様々な巡り合わせとタイミングが噛み合わない限り、ベテラン選手の契約は極めて難しい。どれだけ本人が好調と主張しても、監督が必要としなければプレーはできない。
監督が経験を評価してくれていても、プレーで具現化できないと出場機会は増えない。クラブサイドが選手として、同時に1人の人間としてリスペクトし、チームにいることに価値を見出してくれないと、若い有望な選手が優先されてしまう。
「自分1人だけの力ではないと思ってます」
そう考えると、現在37歳の長谷部は本当にすべてが噛み合っている。
「自分1人だけの力ではないと思ってます。こうやって長くできるのは、自分が努力している部分もありますが、それ以外、周りの人たちとの兼ね合いがよかったんじゃないかと思うんです。クラブとか監督との相性と言うか。すべての人があっての自分だというのは、年齢を重ねるごとに思います」
長谷部はそう語り、すべての人に感謝している。謙虚さではなく自然な思いだ。
家族とともにフランクフルトで穏やかに暮らし、現役引退後もクラブと関わってほしいと熱望されている。
「一緒にトレーニングしてきた中でベストの選手だ。筋肉系の怪我が少なく、常にトップコンディションを保っている。プレーしていなくても、そのプロフェッショナルな姿勢は変わらない。素晴らしい人間で、素晴らしい選手で、素晴らしいチームプレーヤーだ」
アドルフ・ヒュッター監督はこのように絶賛している。
実際、ピッチ上でトップレベルのプレーを披露できていて、まだまだプレーする意欲を失っていない。あの年齢で、ここまで噛み合っている選手はそういないだろう。
そんな長谷部にとってサッカーとは? 今なおハングリーさを失わずにトップレベルのサッカーにチャレンジする原動力とは何だろう?