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「ショート一本」だった中日・根尾昂はなぜ突然“外野起用”されたのか? べた褒め与田監督の思惑とは
text by
小西斗真Toma Konishi
photograph byKyodo News
posted2021/03/05 11:02
3月2日のオープン戦で2点タイムリーを放った根尾(右)は、チームが2-14と大敗を喫したなか、攻守にはつらつとした存在感を見せた
急成長の根尾を使いたい、だけど…
話を守備に戻す。根尾になぜ外野を守らせたのか。与田監督はショートとしての根尾に失格の烙印を押したのではない。後退ではなく前進。ただし、目指すゴールが以前は「京田陽太に勝ち、ショートのレギュラーになる」だったのが一時的に修正された。
実戦が始まってからの根尾は25打数9安打、4打点。長打が二塁打1本なのは少し物足りないが、打率.360は期待以上の成果を残している。明らかに速い球へのコンタクト率が上がっている。
沖縄での根尾の立場は挑戦者。レギュラーである京田は、守備力を高く評価されているが、昨シーズンの打率.247が示すように打撃が課題とされている。それならなおさらのこと、打撃で結果を残している根尾をショートで起用すればいいという理屈になるが、そうではない。ショートは守備のキーストーン。過去2年で成長してはいるが、まだ根尾に任せるにはチームとしてのリスクが高すぎる。
要するに、首脳陣はこの春の段階で根尾が京田を追い抜くとは考えていなかったということだ。だからこそ「ショート一本で」という本人の希望を尊重した。ところが、打撃の方が予想を上回る成長を見せた。どこかで使いたい。だけどショートというわけには……。そこで外野手となった。
まずは「開幕一軍」という山を
巨人の岡本和真もレフトからチャンスをつかんでいった。打てば守備位置は空けてくれる。今回の外野での起用はコンバートではないと与田監督は明言している。今シーズンのレフトは新外国人のマイク・ガーバーを予定していたが、コロナ禍で来日のめどすら立っていない。福田永将は左肩のリハビリは順調だが、まだ二軍にいる。他の候補者は球界最年長の福留孝介に、高卒2年目の岡林勇希、ドラフト6位ルーキーの三好大倫といったところ。根尾にもチャンスはある。
この春はまったくやっていなかったが、外野の経験じたいは過去にもある。長期的目標としての「ショートのレギュラー」は維持しつつ、短期的目標として、まずは「開幕一軍」という山を目指す。言うまでもないが、打って、打って、打ち続ける。それしか登頂ルートはない。