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IWGP世界ヘビー級王座への困惑…飯伏幸太が「本当の神になった!」と叫ぶ真意とは【棚橋、中邑、そして猪木】
text by
原壮史Masashi Hara
photograph byMasashi Hara
posted2021/03/03 11:03
飯伏幸太は白いIWGPインターコンチネンタルのベルトに強い思いを抱く
インターコンチネンタルの意味を取り戻した中邑は
当初の役割に近づけたのは4代目の中邑真輔だ。初防衛戦をアメリカで行っただけでなく、2012年10月にはNEVER無差別級王座の新設が決定し、IWGPインターコンチネンタル王座はその言葉通りに大陸間王座としての役割が明確になった。8回の防衛のうち6回が外国人選手相手のもので、ベルトを奪われた相手もメキシコのラ・ソンブラだった。インターコンチネンタルの意味を取り戻しただけでなく、中邑の独自の世界観も相まって同王座は唯一無二の存在になっていった。
中邑が「最高」に輝かせたことで、IWGPヘビー級選手権と遜色のないカードも実現するようになった。棚橋弘至と戦った2014年の1.4は、試合順でIWGPヘビー級選手権を上回った。
ところが、輝きすぎた。中邑はその後も繰り返し王座を手に入れたが、輝けば輝くほど本来の役割は曖昧なものになった。2016年に中邑が新日本を離れても、ケニー・オメガとマイケル・エルガンのラダーマッチ、内藤vsジェイ・リーサルなど、独自路線、あるいは日本人選手vs外国人選手でメインイベント級のカードが実現することによって輝きは失われなかったが、本来の役割で使われることは稀になった。
内藤の2冠獲得で、またしても存在意義を失った
2017年の6月に16代目の王者になった棚橋は、アメリカでビリー・ガンを相手に防衛戦を行ったり、凱旋したジェイ・ホワイトの挑戦を受けたりと方向性を修正したが、IWGP・USヘビー級王座が作られていたことでその存在意義を取り戻すことはできなかった。登竜門はNEVER無差別級、外国人選手のトップはIWGP・USヘビー級、となり、IWGPインターコンチネンタルは単なる2番目のベルトになった。
その後、2018年から2019年の1.4にかけて内藤とクリス・ジェリコが争った時には大陸間王座としての意味合いを取り戻しかけたものの、同年のマディソン・スクエア・ガーデン大会で内藤vs飯伏の日本人対決が行われたことにより2番目のベルトとしての役割に戻った。
そして2020年の1.5、内藤が2冠獲得という偉業を成し遂げた瞬間、2番目のベルトはまたしてもその存在意義を失った。本来の役割も、途中で得た役割も、全てを失い、白いベルトはこの時点で実質その役目を終えた。