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トップ下で“主人公”の鎌田大地、中盤で鉄板な長谷部誠…王者バイエルン撃破! フランクフルトに春が来た
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2021/03/01 11:04
王者バイエルンを撃破するなど好調のフランクフルト
左サイドの"槍"フィリップ・コスティッチの突破力は以前から定評がありましたが、今の彼は敵陣深く侵入してからのクロスワークが正確です。バイエルン戦では鎌田大地の先制点をアシストしましたが、その時の彼は左サイドでボールを受けた際に確実に中央の敵と味方を視認し、間違いなく鎌田、もしくは後方からアプローチしたヨビッチの挙動を見極めてマイナス気味のクロスを送っています。
ドリブラーは総じて独力打開に走る傾向が強いのですが、今シーズンのコスティッチは球離れが早く、なにより状況判断が秀逸です。バイエルンは欠場したパバールに代わって本来センターバックのニクラス・ズーレを右サイドバックに配しましたが、コスティッチとズーレのマッチアップは前者の大勝利に終わりました。このエリアの趨勢もまた両者の命運を大きく左右したように思います。
この日、ダブルトップ下の鎌田は主人公に変身
そんなアイントラハトの現在の看板はFWシウバ、ダブルトップ下を組む鎌田、アミン・ユネスの攻撃ユニットでしょう。
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バイエルン戦は残念ながらシウバが欠場しましたが、ヨビッチと並んで前線に君臨した鎌田とユネスのプレーパフォーマンスは見事でした。鎌田はスキルフルなトラップと広角視野でパスワークの担い手になりつつ、最終局面に突如出現するシャドーとして存在感を示しました。
鎌田は相手の視界から"消える動き"でアシスト役に回るのが得意ですが、この試合ではコスティッチのサポートを受けて主人公に変身! また、2点目のシーンではユネスにそっとボールを委ねて彼のスーパーカットインプレーを引き出すなど、これまでの特長も存分に発揮しました。
この試合のMVPを挙げるならば、ユネスでしょう。バイエルン守備網のプレッシャーを物ともしないでクルリとすり抜けるドリブルは牛若丸の如し。相手ゴール前へ飛び込んでからのチャレンジはどこまでも野心的で、バチーンと音を立てるような強烈シュートには爽快な風が伴っています。