Jをめぐる冒険BACK NUMBER
【開幕特集】柿谷曜一朗「森島さん、嘉人さん」への後悔と「ウジウジしてもしゃあない」 名古屋で貫く“8番愛”
posted2021/02/26 06:02
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
N.G.E.
――沖縄キャンプでFC琉球戦、ヴァンラーレ八戸戦を見ました。すごく楽しそうにサッカーをしていたのが印象的で。
「この歳になってセレッソ(大阪)を離れるのは予想してなかったから、ちょっと後悔というか、セレッソに対する思いがどうしても出てくるんやろうなと思っていたんですけど、思いのほかスパッと切り替えることができていて。新しい自分じゃないけれど、この年齢でもう一度挑戦できるのが新鮮で、プロ1年目のような初々しい感じが自分の中にあるんですよ。ただ、この年齢で名古屋(グランパス)に呼んでもらって、プレーも1年目のような感覚っていうわけにはいかへんし。最初から結果を求めていかないといけないんで。そういうところも含めて楽しいし、チームが変われば新たな発見もある。なんといっても試合に向けて準備できる環境にいられることに、改めて楽しさを感じていますね」
――即時奪回に関しても、やらされている感じではなく、自ら進んで取り返しに行っているように見えました。
「切り替えのところはこのチームが大事にしている部分なんで。ここ数年、あまり試合に絡めていなかったぶん、体に染み込ませるために意識的にハードワークしているつもりです。まだまだクオリティを上げていけると思いますね。攻撃だけじゃなく、ディフェンスも。こういう気持ちで練習に取り組んだり、サッカーをしているのが、すごく久しぶりな感じで、ほんまに楽しくやれています」
――チーム内には「あんなに守備をしてくれるんだ」という驚きの声があるそうですよ。
「まあ、それはいい風に言うてくれただけか、僕が最初だけ頑張っているか、どっちかですね(笑)」
プレーで表現しないと、人って付いてけえへん
――名古屋は過去にも熱心に誘ってくれていたそうですね。
「3度目? 2度目? まあ、過去にも声を掛けてくれたのは確かです。自分もくすぶっている状態で、名古屋や(かつて報道のあった)ガンバ(大阪)も含め、いろんなチームから話があったんですけど、セレッソの柿谷としてのプライドを捨て切れなかったというか。どんなオファーが来ても、それを守り続けたい気持ちが強かったんです。もうね、監督が誰だとか、自分が試合に出ていないとかは関係なくて、ただただセレッソの8番はこうあるべき、っていう思いが強かった。そういう面では、結果もそうですけど、サッカーは関係なくなっていって。信用できる仲間もいたんですけど、やっぱりプレーで表現しないと、人って付いてけえへんなって感じたし」