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優勝は逃したが…東レ女子“21連勝の立役者”石川真佑20歳の「頼もしい」成長ぶり 2つの課題を克服できたワケ
text by
田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYukihito Taguchi
posted2021/02/25 17:00
Vリーグ決勝、JTに敗れて悔しい表情を見せる石川真佑(20歳)。「弱さが出た」とさらなる成長を誓った
「勝率10割の東レ」の中心にいた石川
レギュラーラウンドでは、21連勝したチームの中で21試合すべてに出場。途中交代はわずか1回。勝率10割のままレギュラーラウンドを終えた今季の東レで、石川は紛れもなくその中心にいた。
ルーキーイヤーの昨年も然り、もっと言えば全国制覇を成し遂げた中学や高校時代から、攻撃力の高さと抜群のセンス、テクニックには定評がある。だが、今季の石川を評する形容詞はそれだけにとどまらない。
東レのセッター・関菜々巳が「とにかく頼もしい。どんな時でも上げれば決めてくれる」と全幅の信頼を寄せれば、ネットを挟んで対峙した日本代表主将・荒木絵里香(トヨタ車体クインシーズ)はこう評している。
「昨シーズンまではウィークポイントだったディフェンス面も含めて、脆さがなくなった。味方だとこんなにありがたい選手はいないけれど、敵になったらとにかく嫌な選手です」
転機は越谷監督の就任
しかし、圧倒的な攻撃力を注目される一方で、課題とされたのが守備。特にサーブレシーブだった。
対戦相手からすれば、万全の準備をして攻撃されては防ぎようがないため、少しでも攻撃準備に入るのを遅らせるべくサーブで狙うのは当たり前。特に近年はサーブ戦術も高まり、個々のサーブ力も向上の一途をたどる中、無理にセッターに返そうとするのではなく、直接失点を防げばいいという考えが一般的になっている。
しかし一方で、多彩な攻撃を仕掛けるためにはサーブレシーブを正確にセッターへ返すことに重きを置くチーム、指導者も少なくない。特に石川のように、173cmと小柄な選手は攻撃力だけでなく、サーブレシーブの安定感も求められる。石川自身も「サーブレシーブが課題」と事あるごとに口にしてきた。
だが今季、1つの転機が訪れた。これまでコーチを務めていた越谷章氏が東レの監督に就任。現役時代、サーブレシーブの名手でもあった越谷監督が打ち出したのは「パス(サーブレシーブ)は正確に返すより、失点しないことを意識すればいい」という指針だった。たとえ崩されても、崩れたところから攻撃できればOK。至ってシンプルな理論は、石川の長所を発揮することにもつながった。
「もともと(下北沢)成徳で高いオープントスを打ってきたので、ハイセットが一番打ちやすいんです。だから、たとえ自分がサーブで狙われてAパス(セッターの定位置に返球するパス)が返らなくても、ハイセットになればブロックを見る余裕もあるし、自分の間で打てるからそれほど問題ないんじゃないか、と思っていました。チームとしていろいろなコンビを使うことを考えれば、もちろん返せる技術もつけなきゃいけないことは変わりません。でも、崩されてもその後打って決めればいい、と思えば気持ちの面では楽になったし、崩された後の切り替えも早くできるようになりました」