「見てた人の方が、覚えているんとちゃいます？　オレの仕事はしゃべることちゃうしね。（山城高の先輩と言われても30歳年齢が違う）釜本さんとはつながりもないし、ほぼ会ったこともないしね。最後のコメントもオレのなかでは監督の松木（安太郎）さんに『オレを出してくれ』と言っただけやというか。メディアとの付き合いもなかったし、お金でもくれたら『なんでしょうか？』っていくらでも話したと思うけど、ホント覚えてないから（笑）」

　ちなみに20歳の石塚はそのシーズン、残りのリーグ戦すべてで先発し、シリーズ優勝に貢献すると、サンフレッチェ広島とのチャンピオンシップにも2試合いずれも途中出場。ヴェルディの前年に続く年間優勝に大きく貢献した。

「金髪もピアスも普通やったし」

　先のヒーローインタビュー同様に、語り草になっているプロ入り前の高校選手権のことについても、石塚はこんな風に振り返ってくれた。

「選手権のことも、よう言われるけど、オレなんもしてないもん。大会前のガンバのBチームとの練習試合で、おちょくってたら削られてケガして。（国見との）決勝のあとは、やれ金髪が高校生らしくない、やれピアスがどうとか学校にもクレームが来たらしいけど、何も別に。だいたい、山城は京都の公立校で、金髪やピアスは（当時は）普通やったし。クラスにはパーマあててるやつだっていっぱいおった。そもそも金髪っていうか、安い脱色剤を使って髪の色を軽く抜こうと思ったらそのまま寝てもうてえらい色になってしまっただけで、黒に染め直す金もなかっただけやしね（笑）」

　山城の前評判は決して高くなかった。だが、大会が始まると有力校とみられていた桐蔭学園（神奈川）、四日市中央工業（三重）にもPK戦で競り勝つなど、石塚不在の山城は決勝まで勝ち上がるまさかの快進撃をみせた。

「大会前は1回戦か2回戦で負けるやろと思われていたチームが、オレがケガして出ないことで逆に団結して決勝まで行っちゃったわけやから、内心は複雑よね。だって、それまでオレがエースやと思っていたのに、なんでオレが出てへんのに勝ってんのって（笑）。チームが勝ち上がるなか出たくても出へんというのでイライラもしていて、その態度がまたふてぶてしいって言われたりしてね」

　国立競技場での決勝戦。満を持してエースがピッチに入ろうとベンチを出た瞬間、スタンドはにわかにザワつき、実況アナウンサーも「ついに石塚登場」と煽った。

「（決勝に出られたのは）もちろんうれしかった。でも、はしゃいでもカッコ悪いし、クールにせなあかんって思って、難しそうな顔してね。いま思えば夢みたいな時間やった」

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#3に続く

「アジア人はナメられてるから…」スペイン移住9年、元ヴェルディ46歳石塚啓次は19歳久保建英をどう見ている？