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今季34歳…森重真人が語るFC東京&自身のこれから J2降格を知るからこその「危機感」と「うっちーの引退」
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byF.C.TOKYO
posted2021/02/18 06:00
キャンプ中、柔らかな笑みを浮かべる森重真人。34歳となる今季も円熟のプレーを見せてほしい
――ルヴァンカップ決勝後の会見でも「タイトルはお金と一緒で、獲るまでは大変だが、獲ることによってまたタイトルが近づいてくる」と話していました。
「ガンバ大阪時代に次々とタイトルを獲得した長谷川監督が言うと説得力があるし、勇気をもらえました。だから、危機感を持ちつつ、自信も持ちつつ。その両方の感情があります」
落ちた時のことを聞かせようとは思っていないけど
――長谷川監督の経験談も貴重ですが、森重選手の経験談も大事だと思います。そうした危機感を、後輩たちに伝えていくつもりですか?
「J2に落ちたときのことを話して聞かせようとは思ってないんですけど、ただ、キャプテンの(東)慶悟が30歳で、その下となると、(24歳の小川)諒也や(渡辺)剛の世代になるんですよね」
――橋本拳人選手、室屋成選手が移籍して、中堅がごそっといなくなってしまいましたね。
「本来なら拳人が次期キャプテンだったんでしょうけど、移籍したので、特に諒也にはもっと自覚や責任感を持ってもらいたい。もう若手じゃないんだぞ、おまえたちの世代が引っ張っていかないといけないんだぞ、という話はしていきたいと思っています」
若い世代に優勝を経験させてあげられた嬉しさ
――ルヴァンカップ決勝後の会見で印象に残っているのは、森重選手が「ホッとした」とこぼしたこと。その言葉には、タイトル獲得を義務付けられながら、約10年の間、叶えられなかった苦しみから解放された安堵が感じられました。
「いや、あの『ホッとした』は、苦しみから解放されたとか、そんな重い話じゃなくて、勝てば天国、負ければ地獄という一発勝負に勝てたことに対する安堵ですね。せっかく決勝まで勝ち進んできたのに、そこで負けたら、なんの意味もないですから」
――そうでしたか。ただ、ディエゴ・オリヴェイラ選手、髙萩洋次郎選手、林彰洋選手と、中心選手を負傷で欠くなか、アンカーという新ポジションで出場してタイトルを掴み取った。チームを勝たせられる選手になったことで、新たな自信が芽生えたりは?
「正直、僕はこれまで決勝で負けたことがないので、大丈夫だろうっていう根拠のない自信があって(笑)。それより、昨シーズンは若い世代がたくさん台頭してきたので、彼らに優勝を経験させてあげられたことが嬉しかった。(安部)柊斗や(中村)帆高なんてプロ1年目でしたからね。1年目からタイトルが獲れるなんて、なかなかない。彼らを含め、若手が貴重な経験を積めたのは、クラブにとってすごく良いことだと感じています」