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「彼女が代表するのは“アイリーン・グー株式会社”だけだ」年収は約35億円…米国生まれ→中国代表の22歳はナゼ論争に? 米メディア編集長の見解は…
posted2026/02/17 17:02
ミラノ五輪でも活躍を見せるアメリカ生まれの中国選手、アイリーン・グー(谷愛凌)。彼女の決断が議論を生むワケとは…?
text by

一野洋Hiroshi Ichino
photograph by
Getty Images
フリースタイルスキーの女子スロープスタイルで銀メダルを手にした22歳のスターは、満足げな表情でこう語った。
「自分史上、最高の滑りだった」
谷愛凌=アイリーン・グーの言葉には、悔しさよりも充実感がにじんでいた。
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フリースタイルスキーは、わずかな空中姿勢と着地の精度がすべてを決める競技だ。転べば終わり、成功すれば歓声が降り注ぐ。その単純で残酷な世界の中で、彼女は今回もトップレベルのパフォーマンスを見せた。
だが、グーの物語はいつもメダルの色だけでは語られない。
アメリカ生まれのトップ選手が、中国代表として五輪の舞台に立つ。その事実が競技の外側で静かな議論を呼び続けているからだ。
グーはカリフォルニア州サンフランシスコ生まれ。父はアメリカ人、母は中国出身。幼い頃から両国を行き来しながら育った。2018~19シーズンまではアメリカ代表としてワールドカップに出場していたが、2019年6月に国際スキー連盟へ国籍変更を申請し、中国代表として競技する道を選んだ。
北京五輪では金2、銀1のメダルを獲得し、一躍世界的スターとなった。
年収は約35億円…アメリカ→中国への国籍変更の波紋
競技だけでなくビジネスの世界でも成功を収め、年間収入は2300万ドル(約35億円)を超えると報じられている。その大半がスポンサー契約によるもので、ファッションや自動車など幅広いブランドと契約を結び、競技の枠を超えた影響力を持つ存在となった。
今回のミラノ・コルティナ五輪でも、彼女は注目選手の一人だった。スロープスタイルに続きビッグエアでも銀メダルを獲得し、世界トップクラスの実力を改めて証明した。
米誌『TIME』はスロープスタイル銀メダルの演技を「彼女史上最高の滑り」と報じ、純粋な競技者としての姿を伝えている。
一方で『New York Post』は北京市当局からの巨額資金をめぐる報道を紹介し、彼女の存在が競技だけでなく経済や世論の問題としても扱われていることを伝えている。
彼女は常に2つの物語を背負っている。世界最高峰のスキーヤーとしての物語と、国籍や価値観をめぐる象徴としての物語だ。

