グラウンドでのキャッチボールや遠投の時から、ボールの伸びが目を引く。右足1本で立ち、少し間を置いてから、フォームを確認しながら1球1球ゆったりと丁寧に投げる。

「キャッチボールは本当に大事なので、しっかり時間をかけてやりたいと思っています。右足で立って、まだ弱いのでふらふらするんですけど、そのふらふらがなくなって、足の裏にしっかりと乗ったのを確認してから、投げるようにしています」

　キャッチボールの相手はレフト線のあたりに立ったまま、山下が徐々に距離を広げていき、センター、そして右中間へと達するが、助走をつけることなく、ほとんど同じフォームのまま、地面に水平なボールが糸を引くように相手のグラブに伸びていく。

　その遠投の話をすると山下は、「でも、この間、山本由伸さんや山岡（泰輔）さんのキャッチボールを見させてもらったら、自信をなくしたというか……」と苦笑した。

「皆さんレベルが違うので、やっぱりすごいなって。一ファンのような目で見ていました。オリックスには本当に素晴らしい投手がいっぱいいて、山岡さんであったり、由伸さんであったり、増井（浩俊）さんなんて自分からしたら本当にレジェンド級なので、そういう選手を見て、いろいろ学んでやっていきたいなと思っています」

　そう初々しく話すが、野望は大きい。

　ストレートは、大谷翔平（エンゼルス）が記録した日本人最速の165キロを目指す。カーブは、昨年日本球界に衝撃を与えたリバン・モイネロ（ソフトバンク）のカーブを目標に定める。

　そんな究極の理想も、山下が口にすると実現可能な目標に思えてしまう。それほどスケールが大きく、なおかつしっかりと地に足がついたルーキーである。

後輩たちからの寄せ書きを手にする山下　©ORIX BUFFALOES