猛牛のささやきBACK NUMBER
18歳とは思えない「ズドーン!」ドラ1山下舜平大の究極の理想は大谷翔平の165キロとモイネロのカーブ
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byORIX BUFFALOES
posted2021/02/02 17:03
オリックスの大きな期待を背負うドラフト1位ルーキー山下舜平大。背番号は「12」
最初は「3年になったらいっぱい(球種を)投げてるんだろうな」とイメージしていたという。だが結果的に2球種で貫いた、いや、2球種を極めた。
「途中からは自分の意思でした。カーブが決まりだして、評価も上がったし、それで抑える楽しみが出てきたので」
話せば話すほど、カーブへの愛とプライドがにじみ出てくる。
「これも人それぞれで、違う意見の人もいると思うんですけど、カーブって一番、変化球の中ではメインだと思っているんです。でも武器になるようなカーブって結構難しくて、カーブがすごいピッチャーがいると『おっ!』となります。そこに、プロになってから時間をかけるのではなく、高校のうちにしっかり時間をかけられたので、よかったと思います。
例えば、もしブルペンで40球投げるとしたら、僕の場合はカーブに20球費やせた。でも4種類変化球があったとしたら、他の球種にもいっぱい費やさないといけない。球種が少ない分、(カーブを)たくさん投げられたので、変化量やスピード、キレも全然変わって、よくなりました」
そのカーブに、プロの打者がどのように反応するのか見ものだ。
もちろん今後は球種を増やしていくつもりだ。まず習得したいと考えているのは“フォーク”だと言う。
「自分はまだ土台がしっかりできていなくて、投球フォームが固まっていないので、スライダーだったりカットボールだったり、指先の変化球だと、フォームがたぶん乱れてしまうと思う。だからまだ縦の変化だけで、と考えています」
自身のことをよく理解し、焦らず、先を見据えて計算しながら、一歩ずつ着実に歩んでいくクレバーな選手である。
周囲が驚く山下の「エンジン」
そしてもちろん、高校時代に154キロを記録したストレートも一級品だ。
1月20日に初めてブルペンに入り、捕手を立たせて20球、ストレートを投げ込んだ。ブルペンで他の新人投手と並ぶと、ひときわ大きく見える。
約2カ月ぶりのブルペンで、本人が「5、6割」という力加減ながら、長い腕から放たれたボールがピュンと一瞬で、浮き上がりながら捕手のミットに吸い込まれた。
ボールを受けた杉本尚文ブルペン捕手は、衝撃をこう表現した。
「すごいエンジンを持ってるなという感じがしました。体が、18歳とは思えない。まずあれだけ手が長いので、すごく球持ちがいいし、リリースがすごく手前に感じて、球はズドーン!という感覚でしたね」
オリックスからメジャーリーグに渡った平野佳寿にタイプが似ているという。