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【祝37歳】長谷部誠の“怪物化”にフランクフルト重鎮が感服… 本人は「カズさんには敵わない」と謙虚
text by
島崎英純Hidezumi Shimazaki
photograph byGetty Images
posted2021/01/18 18:00
ここ数年、長谷部誠のプレーヤーとしての評価は高まるばかりだ。そのプレーをまだまだ、見ていたい
活動エリアは確かに狭まっている感もあって、いわゆる「ボックス・トゥ・ボックス」型のアクションはやや薄いです。とはいえカウンターを浴びた際に味方の急所にいち早く飛び込んで防御姿勢を取ったり、トランジション時に味方守備陣と攻撃陣をリンクさせるファーストアクションを起こしたりと、相変わらず試合全体の流れを読む勘が優れています。
若い選手たちが武器とする馬力を失ったとしても、豊富な試合経験によって培われた頭脳で対抗できる。ヨーロッパサッカーシーンのトップカテゴリーのひとつであるドイツ・ブンデスリーガで、37歳となった長谷部はプロサッカー選手の新たなる理想像を確立させつつあるのかもしれません。
クラブ執行役員「ワインのような選手だ」
アイントラハトのスポーツディレクターを務めるフレディ・ボビッチ執行役員は最近、ドイツのテレビトーク番組に出演した際、長谷部について「年齢とともに良くなっている。彼は本当に、ワインのような選手だ」と褒め称えた後、「彼とは毎年1月から2月頃に(今後について)どうするかを話し合ってきたんだ。(長谷部の年齢については)そんなのは、どうでもいいことだよ。彼は経験豊かで優秀な選手。一番重要なポイントはそれだ。ただ、最終的に決めるのは本人だけれどもね」と言い、来季以降の新契約を締結する意思があることを示唆しました。
長谷部はかつて、年齢を重ね、アイントラハトで確かな成果を残し続けることによって、サッカーをプレーすることの喜びを一層感じるようになったと吐露しています。世間的なイメージの長谷部はサッカー以外のことにも関心を持ち、現役後の未来を見据え計画的に準備を重ねている野心的な人物であるという向きもあります。
しかし、実際の彼は皆さんが思っている以上に、この競技を愛してやまない純真な心の持ち主であるように思えてなりません。
満身創痍でもチームに貢献し続ける尊さ
身体は満身創痍、近い将来に必ず今のキャリアを終えなければならない覚悟は備えているはず。でも、そのプレーレベルとモチベーションが保たれ、何よりチームに貢献できると確信できるのであれば、おそらく長谷部は来季もアイントラハトのユニホームに袖を通すでしょう。
この度、長谷部が尊敬する三浦知良は所属先の横浜FCとの契約を更新し、54歳となる今シーズンも現役でプレーすることになりました。「カズさんには全然敵わない」という長谷部はそれでも、敬愛する先輩選手と並んで独自のキャリアを築いている。少なくとも今季はまだ4カ月ほどの期間があります。
我々はもうしばらく、彼が紡ぐかけがえのない冒険の目撃者になれるはずです。
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