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【父の教え】中村憲剛の心に3つの家訓「感謝・感激・感動」 天皇杯優勝で引退、漫画超えのエンディング
text by
いしかわごうGo Ishikawa
photograph byYUTAKA/AFLO SPORT
posted2021/01/05 11:04
出場こそなかったが、中村憲剛は現役ラストゲームを天皇杯優勝という形で締めくくった
記念すべき第100回の天皇杯出場権を獲得し、チームは決勝に進出。クラブ史上初となる2冠をかけて戦う舞台にたどり着いたのだ。中村はまるで何か不思議なチカラに導かれている感覚を楽しんでいるように、決勝の舞台に向けた思いを口にしている。
18年間のラストが1月1日で新国立……名誉なこと
「現役ラストが元日にプレー。名誉なことだと思います。今までいろんなことを言語化してきた人間ですが、18年間のラストが1月1日で新国立……誰も想像できていないと思います。今シーズンに関しては信じられないことばかり起きてきましたが、最後はみんなで力を合わせてやって勝つこと。その先に見える景色があるので、そこに全力を注ぎたい」
ファイナルの相手は、ガンバ大阪だった。
中村にとっては、初めて経験したカップ戦ファイナルである2007年のナビスコカップ決勝(現:ルヴァンカップ)で涙を飲んだ相手でもある。しかも舞台は、あの時と同じ国立競技場だ。キックオフの14時40分という時刻すら、14番をつけた40歳のために設定されたのではないかと思うほど運命めいた巡り合わせだった。
出番はなくても、仲間の強さが頼もしかった
試合は後半に挙げた三笘薫のゴールで1-0で勝ち切った。
過去のカップ戦決勝では、すべて相手に先制点を奪われていた川崎フロンターレだが、三度のJリーグ王者の経験から試合巧者としての顔を見せる。決め切れずとも焦れずに攻め続けて試合を動かすと、したたかに時計の針を進めた。
相手に付け入る隙を与えてしまった4年前の元日決勝とは違い、終盤の勝負どころでも相手の猛攻を一丸となって粘り強く守り切っている。ピッチで戦い抜いた後輩たちのたくましい姿は、ベンチで出番を待ち続けた中村に頼もしさを感じさせるものだった。
「4年間培ってきたものが最後に出せて勝ったのは、フロンターレの新たな歴史につながるんじゃないかなとベンチから見ていて思いました。頼もしかったです」
見に来た人を自分のプレーで感動させることはできなかった。だが彼自身が味方の成長とたくましさに感激し、試合後には唯一手にしていなかった天皇杯を掲げるという、感動的なプレゼントを受け取ったラストマッチだった。ただただ感謝の気持ちだった。
「心から嬉しかった。こんな幸せなサッカー選手はいないと思います。みんなに感謝です」