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ダニエル・バードと奇跡のカムバック。一度引退した35歳の投手はなぜ復活できたのか?
posted2021/01/02 11:00
text by
芝山幹郎Mikio Shibayama
photograph by
Getty Images
MLB.comが選ぶ2020年のカムバック賞(カムバック・プレイヤーズ・オブ・ザ・イヤー)が決まった。
ア・リーグからはロイヤルズのサルバドール・ペレス捕手(30歳)、ナ・リーグからは、ロッキーズのダニエル・バード投手(35歳)が選出された。
トミー・ジョン手術から復活したペレスは、ずっと第一線を張りつづけてきた人だから、お馴染みの名前だろう。ただ、バードのほうは、忘れてしまった人が多いかもしれない。2005年に創設されたこの賞の過去の受賞者を振り返ってみても、こんなに地味な選手は、18年のジョニー・ヴェンタース(ブレーヴス)ぐらいしか思い出せない。
ヴェンタースは、3度にわたるトミー・ジョン手術から復活した(これも大変なことだ)救援投手だったが、バードも、凄まじい挫折を乗り越えて戻ってきた投手だ。大まかに、その過去を振り返ってみよう。
なぜ「今年」なのか?
バードの全盛期は、2010年から11年にかけてだった。当時の彼はレッドソックスの中継ぎエースで、10年に32ホールド、11年に34ホールドを記録した(ともにア・リーグ最多)。もっとも、このころのレッドソックスはやや勝負の詰めが甘く、2年連続で地区3位に終わっている。監督のテリー・フランコーナやGMのティオ・エプスティーンが相次いで球団を去ったのも、2011年のことだ。
そんなバードに、なぜ今年、熱い視線が注がれたのだろうか。
第一の理由は、2018年1月、彼が一度は完全に現役を引退していることだ。第二の理由は、2013年を最後に、彼がメジャーのマウンドにまったく登っていなかったことだ。くわしく述べる前に、再度、時をさかのぼろう。