箱根駅伝PRESSBACK NUMBER
「相馬が泣き崩れた。それが申し訳なくて…」箱根駅伝を失った直後、筑波大生たちが泣きながら考えたこと
text by
小堀隆司Takashi Kohori
photograph byHideki Sugiyama
posted2020/12/22 11:06
筑波大学構内の陸上競技場を走る4人。左から猿橋、大土手、上迫、西
箱根駅伝に出たい気持ちが背中を押してくれた
猿橋は自身が筑波大で成長できた要因をどう捉えているのか。理工学群に籍を置き、実習などでチーム練習に参加できないことも多かったというが、いかにして走りを磨いてきたのだろう。
「僕は西ほどセンスがあるランナーではないですし、相馬ほどストイックに走り込んできたわけでもありません。ただ、箱根に出たい気持ちはチームの中でもトップクラスで、その気持ちが背中を押してくれたのかなと」
やや謙遜した上で、こう続ける。
「ほんと弘山さんがすごいんです。大事な試合に自分たちの状態やモチベーションをぴったり合わせてくれる。一つひとつの練習は本当にきついんですけど、僕たちは全員がその練習の目的をわかっているから努力できるんですね。ただキツイ練習をやったからと言うのではなくて、その練習から何が吸収できたかを突き詰めている。それがタイム以上の何かを生むんだと思います」
猿橋は卒業と同時に陸上人生にピリオドを打つ。すでにもう「何週間も走ってません」と屈託なく笑う。
戦力ダウンするって言われるけど
前回は、出場が途絶えてから本戦復帰を果たすまでに26年もの長き歳月を要したが、今回はどうなるだろう?
彼らの表情は明るかった。
「よく来季は戦力ダウンするって言われるけど、そんなことはないよね」(西)
「むしろ、あの代は予選会を突破するだけで精一杯だったんだって、後輩たちに笑われる日が来るかも」(大土手)
「僕は大学院に進んであと2年チームを支える決心をしたので、後輩たちと一緒に戦ってまた箱根駅伝に行こうと思います」(上迫)
猿橋や西たちがこの4年間でどのように成長してきたか。それはデータとして残っている。筑波大はこの1年でまた大きな武器を手にしたとも言えるだろう。
先輩の悔し涙を、後輩たちがうれし涙に変えていく。彼らが書き換えた歴史は、筑波大の未来でもあるのかもしれない。
【初めから読む】箱根駅伝を18秒差で逃した筑波大学 濃密な衝突と信頼の時間「いつ主将を辞めろと言われるか…」 へ